お金の流れるプロセスが変われば世界の見え方も変わる――「SHARE SUMMIT2018」でマクアケ中山氏らが議論

お金の流れるプロセスが変われば世界の見え方も変わる――「SHARE SUMMIT2018」でマクアケ中山氏らが議論

2018年9月7日に東京で行われた「SHARE SUMMIT2018」(主催:一般社団法人シェアリングエコノミー協会)は、「一極集中から分散型へ シェアから生まれる新しい社会」をテーマに掲げ、来たるべきシェアリングエコノミーについて語り合うビジネスカンファレンス。その中のセッション「SHARE × MONEY 21世紀に求められるお金の役割」では、デジタル上で本人確認APIを展開する「TRUSTDOCK」の千葉孝浩氏、ポスト資本主義社会を具現化する「Next Commons Lab」の林篤志氏、そしてクラウドファンディングサービス「マクアケ」の中山亮太郎氏が登場し、これからのお金の形態や流れ、お金という存在そのものの大きな変化について語り合った。※肩書きはすべてカンファレンス当日時点のもの。

お金の”常識”は劇変した

中山 20世紀はモノをお金と単純に一対一で交換していましたが、21世紀になってその関係性や流れが大きく変わって来ているように思います。事業や生活を通じて、最近のお金のベクトルについてどう思いますか。

 

 これからは法定通貨や物理的な国境線ではなく、共通の価値観やビジョンをもとにした、価値交換のスピードが驚くほど早い特殊な経済圏がどんどん生まれると思います。そもそも、これからもお金は必要なのかという話もあります。世の中にあるリソースを最適に配分すれば働く必要すらない、必要なことはロボットがやってくれるという世界が5年、10年先に実現すると思います。これは「ベーシックアセット」という言うのですうが、スマホの料金になぞらえると、いわば人生定額プラン。余剰の食糧や不動産を誰もがアクセス可能な公共財にしてしまうことで、お金そのものがいらなくなる未来がやってくるのではないでしょうか。

 

中山 私たちのやっているマクアケというプラットフォームでは、プロトタイプや試作品など、量産前に予約販売、そして入金が得られる仕組みになっています。映画『この世界の片隅に』の場合は、「エンドロールに名前を入れる権利」を1万円で販売しました。すると、普通なら観客ひとりあたりの売り上げは映画代の1800円だけになるはずなのに、制作前からひとり1万円のお金が集まるんです。

 

千葉 そうなんです、いろんなフィンテック企業と付き合うなかで驚いたのは、先にユーザーに入金するサービスがすごく増えているということです。たとえば、不用品買い取りアプリの「CASH(キャッシュ)」もそうです。入金のプロセスを入れ替えるだけで、こんなに世界の見え方や概念が変わり、新しい市場が生まれるんだなと実感しています。

 

中山 たしかにそうですね。マクアケも、プロダクトやサービスをつくる前にお金が入ってきちゃうんです。それがつくる側にとってはユーザーがいるという”勇気”に変わって、ものごとが前に進んでいく。今までは先に行動してから、お金が入っていたのに、最近はお金が入ってくるプロセスが逆になっているように思います。

 

千葉 他人との約束は守ると思うんですよ。たとえばダイエットとか。先に「他人との約束ができる」というのは、ひとつの鍵なのかも知れませんね。

 

中山 そこは、信用のある・なしが大きいと思うんですけど、最近話題になっている「信用」の部分についてはどう思いますか?

 

千葉 僕が思うのは、信用は過去から現在までの積み重ねで、信頼は現在から未来への期待だということ。過去の信用がないから信頼されにくいというシェアエコノミーにおける課題を、社会全体でどうデザインするかは、ひとつの課題だと思います。

 

 中国ではすでに信用がすべてスコア化されて、クレジットカードや不動産売買の与信に使われているじゃないですか。それってユートピアなのか、ディストピアなのかわかりませんよね。

 

中山 そうなんですよね、お金の貸し借りも含めていろんな行動が全部データ化されて、ひどい人はもう出国できないみたいな決定的なデジタルタトゥーになっているんですよね。

 

千葉 一個人としては把握されたくない権利や自由が欲しいという部分もありつつ、サービス事業者としてはちゃんと把握したい。その正義と正義のぶつかり合いをどうデザインするか。そこは中国やエストニアなど他国のものをそのまま持ってくるのではなくて、日本版のデジタルアイデンティティーをきちんとつくらないといけないなと思います。

千葉 孝浩氏(株式会社TRUSTDOCK 代表取締役/CEO)。前身の株式会社ガイアックスのR&D研究「シェアリングエコノミー×ブロックチェーン」でのデジタルID研究の結果をもとに日本初のe-KYC/本人確認API「TRUSTDOCK」を事業展開、専業会社として独立。CtoC取引での本人確認やオンライン買取等の古物商のKYC、個人融資や仮想通貨等のフィンテックの口座開設など、あらゆる法律に準拠したKYC/本人確認をAPI連携のみで実現。様々な事業者を横断したデジタル社会の個人認証基盤、日本版デジタルアイデンティティーの確立を目指す。

遠野市に20人が移住した理由

林 今のお金の問題って、お金が回っていないことなんですけど、じゃあどうしたらお金が回るんだろうと考えた時に、僕たちのプロジェクトで岩手県遠野市に20人ぐらい集団移住したんですね。遠野から生まれる未来にBet(ベット)しようとした人たちが集まってきていて、共通のビジョンで集まっている。そうすると、その中での価値の交換が速いんです。そのなかで独自の通貨みたいなものが生まれると、さらに回転率が上がっていく。そういうことを、ローカルなコミュニティーなどとのやり取りで強く感じますね。

 

中山 価値観や思い描いていることが一緒だと、コミュニケーションが円滑になるのはわかりますが、そこに人が集まってくるっていうのは面白いですね。

 

林 今、やっぱり”家族”みたいなものを求めている人が多いと思うんですよね。それは血縁の家族じゃなくて、自分たちがこれからこの不安定な社会のなかで、生き延びていくための”同志”みたいなものです。

 

中山 僕は地方の課題って、黙っていても人やお金が流れてくるわけがないということだと思うんです。じゃあどうしようかという時に、価値観をひとつ創るというのはすごく意味があるなと思うんですよね。

 

林 そうですね、だから「地方に移住しませんか」ではなく、「このフィールドを使ってこういう未来をつくりませんか」という感じで人を集めるのが良いと思います。どこに集まるかという場所はあまり関係ない。ただ、生産するフィールドとしてのポテンシャルやリソースが地方のほうが余白があるので、集まりやすいというのがあると思います。

林 篤志氏(一般社団法人Next Commons Lab代表)。1985年生まれ。ポスト資本主義社会を具現化するための社会OS「Next Commons Lab」をつくる。2016年、一般社団法人Next Commons Labを設立。自治体・企業・起業家など多様なセクターと協業しながら、新たな社会システムの構築を目指す。「日本財団 特別ソーシャルイノベーター」に選出(2016)。「Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人」に選出(2017)。

価値観にお金が集まる時代の信用のあり方

中山 お金の流れ方という部分では、僕は2つのポイントがあると思います。ひとつは、未来の「確からしさ」という部分。これからは人の信用や、事業・プロダクトへの期待といった「確からしさ」に寄付や消費、投資が行われ、お金が流れていくと思うんです。そこを中国のように思いきり数値化するのではなく、もう少しあいまいな日本人らしい「未来の信用のあり方」ができてくると、人や自治体、企業にもスムーズにお金が流れるようになるのではないかと思います。

 

千葉 シェアとマネーとテクノロジーという話になると、ブロックチェーンなど、トークン化してセカンダリーマーケットでやりとりできるようになりますよね。そうなると、給料を何で受け取るかを選べる時代がくるかもしれません。

 

中山 もうひとつは、価値観へのBetにお金が流れるということです。イーサリアムやICOも含めて、こんな未来が待っているという価値観にお金が流れていくと思うのですが、そういう「お金が集まる価値観」は、どうしたらつくれるのでしょう。

 

 ”家族”のような信用の無限増殖装置をつくることだと思います。人が永遠に信用してくれる共同幻想をつくれると、誰でもお金がつくれるようになると思うんです。それを突き詰めると、いずれお金はいらなくなってしまうと思います。

中山 亮太郎氏(株式会社マクアケ 代表取締役社長)。2006年に株式会社サイバーエージェントに入社後、社長運転手の傍ら新規事業を立ち上げる。2010年からは株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズのベトナム投資担当としてベトナム在住開始。2013年に日本に帰国後、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングを設立。同年クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」をリリース。2017年に株式会社マクアケに社名変更。

取材:錦戸 陽子

構成:石川 香苗子