DApps市場の開拓者:グッドラックスリー 井上和久氏[前編]―「くりぷ豚」でブロックチェーンゲームの可能性を追求する

DApps市場の開拓者:グッドラックスリー 井上和久氏[前編]―「くりぷ豚」でブロックチェーンゲームの可能性を追求する

ブロックチェーンゲームは「DApps(分散型アプリケーション:Decentralized Application)」とも呼ばれ、トークンエコノミーを構成する要素として重要な役割を担う。CryptoKittiesなどの成功事例も出てきているが、ブロックチェーンならではのゲーム設計や収益モデルの構築などについて、業界では議論と模索が続いている。そんな中、株式会社グッドラックスリーは株式会社セレスと日本初となるイーサリアム上のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」を共同開発し、「ブロックチェーンとDAppsに全社を挙げて注力する」と宣言した。
前編では、同社の創業者であり代表を務める井上和久氏に、DApps参入のきっかけやビジネス面での手応えについてお聞きした。

インキュベーターから起業家へと転身

―― グッドラックスリーを起業された経緯について教えてください。

 

前職である株式会社ドリームインキュベータに在籍していたころ、子会社でモバイルゲーム事業の立ち上げをしていました。道半ばで中止になってしまいましたが、ゲームに限らずエンターテインメント全般が大好きだったので、人生一回だけなら、大好きなことを思いっきりやってみようと思い起業しました。ちょうどプロジェクトの開発スタジオが福岡にあり、私自身も福岡出身でしたので、機会と縁を活かして福岡でスタートしました。

 

株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長兼グッドラッカー 井上和久氏
株式会社グッドラックスリー 代表取締役社長兼グッドラッカー 井上和久氏

 

―― 映像制作や芸能プロダクションなど、エンターテインメント分野でさまざまな事業を展開していますが、その中でもゲームが柱になるのでしょうか?

 

ゲーム事業は市場が大きく、それを求めるユーザーが大勢いるところが魅力です。ただし、エンターテインメントの種類は、映像、音楽、漫画などゲーム以外にもたくさんあります。数ある表現手法の1つがゲームであり、ユーザーを楽しませるという目的においては事業領域にこだわるつもりはありません。とはいえ、現実問題としてどこにフォーカスすべきかは、情熱や思い入れは前提として、会社の強みや得意分野、市場性なども踏まえて決めていきます。

 

現在は「くりぷ豚(くりぷとん)」を軸の1つにして、ブロックチェーンゲームで世界の最先端を走ることを目標にしています。ブロックチェーンゲームは、ユーザーの広げ方や収益化などで模索中ですが、可能性は大きいと考えています。

 

グッドラックスリーとセレスが企画・開発した日本初のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」。キャラクターである「くりぷトン」の収集、育成、レース出場などが楽しめる
グッドラックスリーとセレスが企画・開発した日本初のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」。キャラクターである「くりぷトン」の収集、育成、レース出場などが楽しめる

全社挙げてのブロックチェーンシフトを宣言

―― 今後の事業はブロックチェーンに注力していくことになるのでしょうか?

 

ユーザーを楽しませるという観点からすると、ブロックチェーンも手段の1つでしかありません。それでもブロックチェーンはインターネットが始まって以来の衝撃だと思いますし、会社としても強く打ち出していきます。全社を挙げてブロックチェーンに注力していくと宣言しています。すでに「くりぷ豚」以外にも「CryptoIdols(クリプトアイドル)」というDAppsをリリースしています。

 

現在は、暗号通貨を支える技術として注目されることが多いブロックチェーンですが、スタートアップの資金調達法としてICOが1つの機会になっていることなども大きな変化ですし、私たちのビジョンを実現するためにも重要です。

 

―― 現在配信中の「ぐでたま」シリーズなど、ブロックチェーン関連以外のプロダクトは今後縮小していくことになるのでしょうか?

 

2019年以降は、ブロックチェーンゲームにも有名なIP(知財)コンテンツが登場してくると思っています。そうなると、サンリオさんのようなIPを持つ企業との関係性は強みになります。私としては、そこも含めてブロックチェーン事業の一環として捉えています。2018年11月にリリースした「ぐでたまクエスト」はブロックチェーンゲームではありませんが、そういった将来の可能性も見越した製品ということです。

 

社名にも入っている「グッドラック(幸運)」というものは、それを呼び込むための下ごしらえが必要です。いきなりチャンスが降ってくるわけではなく、準備した人だけがつかめる。そういうものだと考えています。ですから、ブロックチェーンゲームにシフトするならそれ以外は全くやらない、という単純な話ではありません。

 

たくさんのユーザーに楽しんでもらえるエンターテインメントづくりには、土を耕し、種をまき、実るまで待つというプロセスが必要です。新規事業の立ち上げやコンテンツ開発に、学生時代も含めると20年以上関わり、創業社長としても6年の経験からも、大きなビジョンを描きながらも、日々コツコツ地道に取り組むことの重要性を実感しています。いまは、まだ種まきの段階で、ようやくいくつかの芽が出てきた感じです。

「くりぷ豚」でのDAppsビジネスに手応え

―― くりぷ豚」をリリースしてから半年以上が過ぎましたが、手応えと今後の盛り上がりはどのように見ていますか?

 

伸びていく手応えがあります。BtoBのビジネスなら契約を1つ1つ積み重ねていけばなだらかに上昇していきますが、BtoCのビジネスは階段を上るように段階的に変化します。ある時点でキュッと上がる。「くりぷトン」の育成とレースがそのきっかけになると期待しています。

 

これまでの「くりぷ豚」では、取引の基準となる要素は外見やキリ番くらいでした。例えるなら美術品の値付けで、専門家と素人では大きく異なるようなものです。定性的な外見だけですと、趣味嗜好に依存しますから価値を比較することが難しいのです。

 

しかし、レースでは戦績が出ますし、その勝ち負けはスピードやスタミナ、特殊スキルといった複数のパラメータが影響します。多くの人にとってわかりやすい定量指標ができたことで、相場感が共有されて取引しやすくなると考えています。さらにレースに勝つという目的ができると、ゲーム内で必要なキャラクターやアイテムが自ずと明確になります。それを私たちが販売していけばいいわけです。

 

運営者である私たちが継続してサービスを提供するには、どうしても一定の収益が必要です。ユーザーがほしいと思う価値あるキャラクターやアイテムを販売できるようになると、ユーザーにとってもさらに魅力的なコンテンツになっていきます。その兆しが見えてきたところです。

 

 

―― くりぷ豚」では、ノンファンジブルトークンであるERC721規格を利用して、ゲーム内のキャラクターの唯一性や固有性を実現しています。やはりこの仕組みは魅力的でしたか?

 

代わりのない希少なアイテムを収集するという遊びは、昔から魅力があります。私の世代だとビックリマンシールがまさにそれで、大切にブックレットに保管した熱い思い出があります。友人と対面でやりとりするなど、物理的なものであるがゆえの良さもありましたが、同時にいつかは捨てられてしまうという限界もありました。それが、ERC721のイノベーションによって、デジタルデータではあるけれど永久に残せる資産にすることができる。私たちが夢中になった遊びをデジタルで進化させた形で再現できるわけです。しかも、先日レース体験版を公開して「くりぷトン」が走り出すようになり、デジタルデータゆえのゲームの面白さも付加されました。

 

自分が手塩にかけて育てた「くりぷトン」が動く姿は本当にかわいい。キャラクターを持っているだけでなく、レースに出場させてゲームまで遊べる。DAppsビジネスの進化に、ゲーム開発会社である私たちの強みを活かすことができたと思っています。

普及のためのハードルは暗号通貨の使いやすさと法制度

―― 現在のユーザーとしては、どのような属性の方が多いのでしょうか?

 

やはり暗号通貨に詳しい人が多いです。ビットコインではなくイーサリアムを持っているという時点で、かなり絞られますよね。自然と暗号通貨の取引口座を作るようになるきっかけを、いかに作り出せるかが鍵になると思っています。

 

私が暗号通貨に触れることになったきっかけは、数年前に、先輩に飲み代の精算をビットコインで支払われたことです。2万円くらいだったのでこれは捨てられないぞと、よくわからないながらも取引所のアカウントを作って使えるようにしました。同じように、何かのきっかけがあれば、暗号通貨に興味のない人でも使うようになるのではないか。そう思って、「くりぷ豚」にはきっかけ作りのために友人に「くりぷトン」をプレゼントできる機能を付けています。「2匹あげるから、それでレースに出なよ」という感じで広げてもらうことを期待しています。

 

 

―― ゲーム内でイーサリアムを購入できるとスムーズですが、法律の壁が立ちはだかります。仮想通貨交換業者の免許取得も視野に入れていますか?

 

当社が免許を持っていない以上、現在は取引所を利用してもらうしかありません。しかしユーザーの利便性を考えると、中長期的には免許を取得して交換機能を提供するという選択肢もあるとは思います。

 

または、法定通貨に変える必要がなくなるくらい、イーサリアムをはじめとした暗号通貨が普及し、使える場所が多くなると自然と解決します。私は、その未来のほうが面白いし、その未来を作ることに貢献していきます。そうなれば、私たちはDAppsを開発することに集中するだけです。

後編では、開発中のDAppsプラットフォームや今後の展望についてお聞きします

 

インタビュー実施日:2018年10月25日
構成:仲里 淳
写真:友澤 綾乃

 

Profile

井上 和久(いのうえ かずひさ)

株式会社グッドラックスリー

代表取締役社長兼グッドラッカー

1980年生まれ。福岡県出身。東京大学工学部卒業。前職ドリームインキュベータでは、インターネット・モバイル・コンテンツ分野を統括。「ブロックチェーン×エンターテイメントで世界最先端を走る」というビジョンを掲げ、国内初ブロックチェーンゲームの「くりぷ豚」、「クリプトアイドル」、ブロックチェーンアミューズメントプラットフォーム「RAKUN」などを手掛ける。「さわって!ぐでたま」シリーズ累計400万DL突破。「エアリアルレジェンズ」累計200万DL。地域発企業ドラマ「人生のメソッド」シリーズは、福岡国際映画祭2018上映作品。