
2018年、LINEは「LINE Token Economy」構想を発表し、独自ブロックチェーンやDAppsプラットフォームへの取り組みを明らかにした。LINEは単なるスマホアプリの枠を超えてプラットフォームとしての地位を確立し、ゲームや音楽配信、ショッピング、ニュース、AIなどの領域においても強い存在感を示す。事業領域を金融分野にも拡大している同社がブロックチェーンを使って実現しようとしているものは何なのか。LINE Blockchain Labを率いる那須利将氏と開発者コミュニティとのパイプ役を務める砂金信一郎氏に話を聞いた。
韓国ブロックチェーンプロジェクト「ICON」と協業
―― ブロックチェーン事業である「LINE Token Economy」や「LINKエコシステム」におけるお二人の役割と組織体制について教えてください。
砂金信一郎氏 私はLINE全体のデベロッパーリレーションを担当しています。社外の開発者との関係づくりを役割としていて、技術広報とも呼ばれます。たとえば、LINEのMessaging APIを社外に公開していますが、それを利用する開発者の方々に向けて必要な情報を提供しています。
LINK Chainについても、将来的にはDAppsプラットフォームとしてオープンにし、開発キットも提供する予定があります。それに向けて現段階でどのような技術情報を提供していくべきか、那須のチームと話し合いながら進めています。
ブロックチェーンやプラットフォームの運営者として、トークンの開発者として、さらにDAppsの提供者として、われわれにはさまざまな立場があります。どのようなコミュニケーションスタイルが適切なのか、試行錯誤しながらやっています。

那須利将氏 私はBlockchain Labに参加する前は、LINEメッセージのバックエンドシステムを担当していました。トランザクションシステムのベースとなるストレージ部分の開発と運用で、Apache HBaseなどの分散データベース技術を扱っていました。分散システムの経験があり、ブロックチェーンにも興味を持っていましたので、社内でブロックチェーン事業の話が出てラボも設立すると聞いて、手を挙げました。
Blockchain Labは2018年4月に設立の発表を行いましたが、社内では2月ごろから動き出していました。同じタイミングで韓国側の開発チームにもラボができて、双方で方向性やトークンエコノミーの構想について検討し始めました。
検討を重ねた結果、技術面では韓国のブロックチェーンプロジェクトである「ICON(アイコン)」とパートナーシップを結ぶとともに、技術開発を行う「Unchain(アンチェーン)」というジョイントベンチャーも作りました。また、トークンエコノミーの設計を行う「Unblock(アンブロック)」という子会社も設立しています。Unblockは、暗号通貨とブロックチェーン分野に特化したベンチャーファンド「unblock ventures Limited」も運営しています。LINEのブロックチェーン事業は、これらの関連会社と協業しながら進めています。


ユーザー還元の仕組みとしてトークンエコノミーに着目
―― ブロックチェーンに対して期待することは産業ごとにさまざまで、トークンエコノミーは数ある中の1つです。いつごろ、そしてなぜトークンエコノミーに決めたのでしょうか?
那須氏 まず、ブロックチェーンを活かせる分野はあるかというところから検討を始めました。LINEは、ファミリー向けサービスまで含めて多種多様なサービスを提供していますが、そもそも、サービス上での何らかの投稿や「いいね」等のユーザーの行動によって、サービスは成長していくわけですよね。そこで、サービス成長の貢献者であるユーザーに「価値を還元する仕組み」を提供したいと考えました。そこから議論が進み、LINEがブロックチェーンで何かやるなら、トークンエコノミーが最適ではないかという結論は、早い段階で出ていました。
ブロックチェーンの可能性は、もちろん他にもあります。ただLINEはサービスの企画や開発が得意なので、ブロックチェーンをプラットフォームとすることでその強みを活かせると考えています。

ブロックチェーンによって透明性や信頼性を高める
―― LINEではすでに多くのサービスやビジネスを展開しており、その筆頭ともいえるコミュニケーションアプリ「LINE」はプラットフォームとしても大きな存在です。それにもかかわらずブロックチェーンに取り組む理由は何でしょうか? ブロックチェーンはLINEにどのような価値をもたらすのでしょうか?
那須氏 LINEが実現したいのは、ユーザーのアクションへの適切な還元です。それをしっかりとやりたかったというのが背景にあります。おっしゃるように、既存サービスの中でも不可能なわけではありません。しかし、ブロックチェーンを使うことで透明性が高まり、私たちの手から離れた状態で合意形成を実現できるので、信用性が向上します。世の中の流れを見ると、そのような価値を提供できることは、今後サービスを提供していくうえで重要だと考えています。
砂金氏 他のブロックチェーン関連プレーヤーと比べてLINEが少し特殊なのは、「ブロックチェーンを使うことでユーザーはハッピーになるのか、メリットを得られるのか」ということを常に確認しながら進めているところです。技術的先進性やパフォーマンスだけを追求するだけなら、ブロックチェーンである必要はありません。
企画担当だけでなくエンジニアも、ずっとユーザーに還元したいと思っていたところにブロックチェーンというものが現れました。「これ、トランザクションコスト低いし、改ざん性が高くて証明のコストもかからないし、使ってみようよ!」となるのは自然な流れですよね。
現在提供しているDAppsも、Q&Aや未来予測など、そういうメリットを活かしたものが中心です。参加者全員が、お題を出す側にも答える側にもなれるという状態を作ったうえで、還元する仕組みも組み込む。15年前に描いていたインターネットの未来の姿を、もう一度自分たちの手でつくり出せるかもしれないと、企画側もエンジニア側もみんな盛り上がっています。
「できることはすべて自前で」がLINEの企業文化
―― イーサリアムなど既存のチェーンがいくつかある中で、ICONの技術を使って独自チェーンでやろうと考えた理由は何でしょうか?
那須氏 ICONと組もうと考えたのは、イーサリアムやビットコインと同じように取引所に上場していて、実運用環境での拡張性や処理性能の高さが証明されていたからです。また、運用経験のあるチームと一緒にできることも決め手になりました。
砂金氏 イーサリアムではできないのかというのがご質問の意図なら、「自分たちですべてやるという企業文化があるから」という答えになるでしょうか。LINEには経営陣含め、「自分たちでやれるものは、自分たちでやろう」という考えの人間が多いのです。
たとえばスマートスピーカーでは「Clova」というLINE独自のAIアシスタントを開発していますが、手間だけの話ならアマゾンのAlexa向けにスキルを提供するほうが圧倒的に楽で早いです。しかしそれでは、iOSやAndroid向けにLINEアプリを出すのと何も変わりません。プラットフォームとして勝負できるチャンスがあるならチャレンジしてみよう。たとえお金や人手がかかったり、リスキーだったりしてもやるべきだ。そういう判断基準が大前提としてあります。
那須氏 もう1つの理由として、LINE自身が実証実験モデルとなってブロックチェーンでいろいろなものを動かしたり、チェーンの最適化を行ったりするには、少なくとも最初の段階ではプライベートチェーンで始めるほうがよいだろうと判断したからです。
イーサリアムは非常によいエコシステムを築いています。多くの開発者がより良いものにしようと積極的にかかわっていて、進化のスピードも速い。しかし、LINEが目指しているチェーンの姿やそれを実現するまでの優先度と一致するかはわかりません。
自分たちでいろいろと検証してみて、ユーザーのためになってパフォーマンスも維持できると確認できたら、LINK Chainをパブリックにしよう。それまでは、既存のパブリックチェーンではなく、われわれ自身でチャレンジしようということです。
開発者にやさしいDAppsプラットフォームで市場を広げる
―― LINKをDAppsプラットフォームとしてとらえた場合、その運営者としてどのように発展させていこうと考えていますか?
那須氏 外部の開発者にもやさしいDAppsプラットフォームにしたいと考えています。そのためのプロトコルや開発キットも準備中です。プラットフォーム運営者としていろいろやり過ぎると「中央集権的じゃないか」と言われるかもしれませんが、DAppsを提供してトークンを発行してエコノミーを構築することは、プラットフォーム側の役割と考えているので、そこは積極的に進めていきます。
―― 将来的にはオープンなDAppsプラットフォームとして、独自のトークン発行も自由にできるようになるのでしょうか。
那須氏 そこは段階を踏みながら進めていくことになると思います。現在は、独自のトークンである国内向けの「LINK Point」と海外向けの「LINK」を簡単に扱えるようにすることを第一にやっています。
砂金氏 LINEが外部の開発者に求めるスキルレベルは、他社に比べると低めだと思います。LINEのMessaging APIは、名称なども含めて迷わず簡単に使えるようにしています。多くの開発者にMessaging APIを使っていただいている理由は、ネイティブのiOSやAndroidアプリを開発するよりも簡単に自分がやりたいことを実現できるからです。LINKも同じで、ブロックチェーンや暗号通貨の基本技術をすべて理解していなくても、DAppsを開発できるようにするつもりです。
―― それによって、サードパーティによるDAppsを増やしたいということでしょうか?
砂金氏 そうです。開発人口を増やすことで、ユーザーベースも増えていくはずです。30人の開発者が1000人のユーザーのために作るという規模では、エコシステムとして回らないですから。DAppsの開発を一般化するような役回りがLINEには求められていて、それは使命でもあると思っています。
那須氏 まだまだ小さなDApps市場を大きくしていきたいという思いが強くあります。自分たちでプラットフォームを作って開発キットまで提供しようとするのは、それによって市場拡大を加速できるかもしれないという期待があるからです。

―― 2018年9月に発表した5つのDAppsは、開発者に対して見本を示すという意図もあるのでしょうか?
砂金氏 いきなり「自由に作ってください」と言われても、何から作ればいいのか悩みますよね。LINEが発表した5つのDAppsは、きっとこういうことをやるとユーザーから支持されてトークンエコノミーとして成り立ちそうなものです。これまでのアプリ開発経験から、一般的なユーザー向けサービスとしては標準的なDAppsアーキテクチャだと考えています。形にして見せることで、初めて「私が作りたいアプリではないな。自分で作ろう」という人たちが出てきます。
ただし、われわれもこれがDAppsの完成形だとは考えていません。試行錯誤する中で出てきたアイデアを形にしてみたら、「現時点だとこんな感じ」というところです。
トークンはサービスを盛り上げるための潤滑油
―― DAppsを通じてトークンを集め、収益化するというビジネスモデルは考えていないのでしょうか?
砂金氏 暗号通貨ということに重心を置いたDAppsだと、ゲームのキャラクターやアイテムに唯一性を持たせて、さらに換金価値があるものにして収益を出そうという方向に振るのかもしれません。しかしLINEにとっては、ユーザーが積極的に参加してくれる仕組みとはどうあるべきかが最大のテーマで、暗号通貨も含めてトークンはそのための潤滑油として考えています。BITBOXにしても、決して暗号通貨交換ビジネスをやること自体が目的ではなく、あくまでもトークンエコノミーを実現するために必要な構成要素という位置づけです。
―― LINKの取引は現時点では日米以外のユーザーが対象で、日本ではLINK Pointという暗号通貨ではない形で提供しています。統一されているのが理想だと思いますが、将来的にはどのようにお考えでしょうか?
砂金氏 もちろんすべて同じようにできればよいですが、全てのサービスは法整備に則って提供するべきであり、あえてグレーゾーンを突き進んでまでやるべきではありません。各国のレギュレーションに従いつつ、しかるべきタイミングで次の展開をしていくことになると思います。
ユーザーの立場で考えると、現金換金性があるほうが便利だというのは理解しています。それを今ある仕組みで法制度に則った形として提供するため、日本向けのトークンであるLINK Pointは、LINEポイントと交換できるようにしています。プラットフォーマーの責任としては、LINEポイントを現金相当の便利さで使えるよう「LINE Pay」を普及させていくべきだと考えています。そうなれば、現金化できなくても不便を感じることは少なくなりますよね。個人的には、ゆくゆくは現金や現金相当のものとも交換可能な世界を実現していきたいですね。
―― 日米以外のユーザーはBITBOXでLINKを購入できますが、それは何を期待しているのでしょうか? DAppsが本格的に立ち上がってLINKの使い道が増えるまでは投機でしょうか?
砂金氏 今のところは投機目的だと思います。LINEグループ全体としては、国内においてはLINK Pointをユーザーに配り、その対価として何か活動していただくというのが本来の目的です。通貨として使える場所をたくさん増やすよりも、サービスを成長させるための潤滑油としてどう活用するかです。
将来的にLINKそのものをどこかで使えるようにする可能性はあるかもしれません。ただ、それに注力するのではなく、現金相当の何かに変えられる仕組みをまずは担保しようとしています。たとえば、BITBOX上でLINKをEther(イーサリアム)と交換できれば、それを現金化することができます。

新事業の人材を社内から集められることが強み
―― ブロックチェーン事業を立ち上げるにあたり、エンジニアなどの人材も新たに集めているのでしょうか?
砂金氏 LINEがこの分野に参入するうえで強みの1つになっているのは、社内に人材がいるということです。
那須もその1人ですが、社内に分散系システムや高度なトランザクションシステムに携わってきたエンジニアがたくさんいるので、それをコンバートさせることで人材を確保できています。そこは他社のようには困っていませんし、比較的有利な位置からスタートできていると思います。
それぞれ技術的専門性を持っていて、特に分散システムの運用経験ある人材が集まって、ブロックチェーンという同じ分野で切磋琢磨する。それが日本側でも韓国側でも起こっているので、開発チームは多様性のある組織になっています。
一方で、DAppsの企画やブロックチェーンをどう見せていくかは、マーケティングチームが取り組んでいます。これまで数多くのアプリやサービスを提供する中で、何が受け入れられやすいのか、ユーザー目線でどう考えるべきか、KPIをもとにどう改善すべきかなど、多くの知見が蓄積されています。そこも、LINEとして一日の長があるところです。
―― ブロックチェーンのエンジニア不足はいろいろなところで聞かれますが、求められるスキルレベルや新たに学ぶ必要のあることは、それほど多くはないのでしょうか?
那須氏 エンジニアリング的に言えば、分散システムに強い人材というのは、ブロックチェーンそのものやプラットフォームを作っていくには重要なポイントです。私の場合は、HBaseなどの経験があったので、合意形成アルゴリズムやビザンチン問題などに対するアレルギーはなく、すんなりと入っていけました。ブロックチェーンも、「ちょっといい感じのアルゴリズムがいろいろ出てきて楽しいな」くらいの感覚です。
―― 分散システムの経験者であれば、ブロックチェーンはむしろ身近で新鮮味がないくらいの感覚なのでしょうか?
那須氏 もともと分散処理を考慮したミドルウェアが世の中にはたくさんあって、それを使ったソリューションも提供されています。分散システムをやってきた人からすると、それこそ「今さら合意形成の話をしているの?」という感覚で、またゼロから作り直すというのは不思議に思うかもしれません。
ただ、既存の分散システムは基本的にプライベートネットワーク上で構築されることを前提としています。その点ではビザンチン問題などは解決されていますが、パブリックなブロックチェーンはP2Pネットワーク上にあるので、合意形成の方法をもう一度見直しましょうということです。ビットコインやイーサリアムは、その方法を具体的に提示してきましたが、まだ問題はあります。どうやれば技術的に解決できるか、その研究が盛んになっているのが今という認識です。

技術だけでなく各国文化に即したサービスづくりで世界と勝負
―― 国際市場におけるLINKやLINEの強みは、どのあたりにあると考えていますか?
砂金氏 強みを技術的優位性としてとらえるか、サービス全体のエコシステムとしてとらえるか、あるいはLINEアプリを象徴とした日本文化の視点でとらえるかで大きく変わります。
結局、それも同じ話に帰結します。LINKを使ってユーザーがより積極的に参加してくれる、和やかな参加型システムを作り上げたいというのが、LINEの目的としてまずあります。そしておそらく日本人には、そういうものを求める国民性のようなものが、古くはパソコン通信の時代からあるのではないでしょうか。「こういうものがあったらいいよね」というみんなの願いを一緒にかなえるという観点で、その仕組みを文化ごと作ろうとしているところがLINEの最大の差別化要因になるかもしれません。
個別技術だけ見れば、こっちのほうがパフォーマンスが高いとか低いとか計算量が多いとか少ないとかいろいろあるでしょうけど、それらはいずれコモディティ化していきます。
もちろん、そういった部分での競争はR&Dとしても重要ですが、「すごいけど、ところでそれは何のサービスに組み込むんだっけ?」となるようでは意味がありません。それよりもコンテンツやサービスには、ユーザーやその文化を背景にした「日本ではとてもウケたけど、タイではさっぱり」といったことがあります。その部分で強みを持って競争していきたいと考えています。
GAFA一極集中に対する対極的存在に
―― インターネット上には多くのプラットフォームがありますが、その中でもGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が巨大な力を持っており、もはや自由や多様性のある本来のインターネットではなくなってしまったという声も聞かれます。ブロックチェーン時代になると、プラットフォームの在り方や競争や差別化はどうなっていくとお考えですか?
砂金氏 個人的にはなりますが、私は、同じような話をAIの文脈でもすることがあります。AIの領域でも、GAFAが大きな存在感を示しています。さらに、中国のテンセント(騰訊)やアリババ(阿里巴巴)も加わります。
これらの企業は、膨大なテキスト情報や地図情報、商品情報や購買情報を持っていて、それを使って収益を上げています。しかし、集められないデータものもあるはずで、それがチャンスになるというのがGAFA論の定番です。でも、もう1つ手前の段階として、データを集められないと自分たちのAI技術が進歩しないという問題があります。
現在のAI技術は機械学習やディープラーニングが重要な役割を果たしていますが、そのためには教師データが重要です。教師データには、「良い悪い」「何を意味しているか」といったタグ付け(アノテーション)が必要ですが、そのようなタグ付けされたデータを集める仕組みとして、ブロックチェーンベースのトークンエコノミーは非常に相性が良いと思っています。たとえば、商品を撮影して、レビューを書いて、タグを付けるというサービスのユーザーが増えることは、その読者にとって便利なだけでなくAI研究にも寄与するということです。
AIを賢くするための源泉ともいえるデータを、各国の法制度、レギュレーションに則った上で、かつユーザーの完全同意を大前提に収集できる基盤をしっかりと作り上げる。それによって、日本そしてアジアの企業としてGAFAに対抗していきたいという思いはあります。
日本語で何かやろうとしたとき、気づいたら日本の企業は誰もデータをもっておらず、GAFAにお金を払わないと日本人の購買情報はわからない、日本の観光地の写真も検索できなくなっていたという状況にはしたくないですよね。別にナショナリズムといった意味ではなく、日本のみなさんの生活や嗜好性を一番よく知っているはずのLINEとして、それに取り組む必然性があります。ブロックチェーンの技術をうまく活かして、みんなが楽しめて生産性も上がるような世界を作っていきたいです。
那須氏 GAFAのような存在との競争という点では、対立や対抗というよりも「もう1つの選択肢」として対極のポジションを目指しています。
将来、情報は一極集中ではなく、みんなで持ち合いましょうという非中央集権的な世界が到来するとします。そうなるとビジネスでも砂金が話したように、一極集中でそこにお金を払わなければいけない世界よりも、分散していて自由にアクセスできる世界が支持されるのではないでしょうか。
その時、現在のプラットフォーマーたちがどうっているかは私にはまったく想像できません。しかし、そのような分散型のプラットフォームがどんどん構築されていくと思います。
イーサリアムはプラットフォームとしてすばらしいですが、完璧というわけではない。だからこそ、他のプラットフォームを開発しよういう動きが世界中で起きているわけです。多数のブロックチェーンが登場してきたら、次はそれらが相互につながり始めるクロスチェーンやインターチェーンの世界がやってくるのではないでしょうか。

インタビュー実施日:2018年11月8日
構成:仲里 淳
写真:友澤 綾乃
Profile
砂金 信一郎(いさご しんいちろう)
LINE株式会社
Developer Relationsチーム
マネージャー/プラットフォームエバンジェリスト
日本オラクル、戦略コンサルティングファーム、スタートアップ企業を経て、日本マイクロソフトに入社し、エバンジェリストとして活躍。女子高生AI「りんな」をきっかけに、LINEに参画。AIやブロックチェーンなどの技術を当たり前のものとして普及させるべく、企業や社会と個々人の距離を縮めるLINEプラットフォーム啓蒙活動全般を担当。
那須 利将(なす としまさ)
LINE株式会社
Blockchain Lab
Development Center 1
ネイバージャパン株式会社、NHN Japan株式会社を経てLINE株式会社に在籍。現在は「LINE Blockchain Lab」にて、LINE独自のブロックチェーン「LINK Chain」の開発を担当、日々奮闘中。