フェイスブックやインスタの次をねらう「FiNANCiE(フィナンシェ)」とは? 國光宏尚氏が描くブロックチェーンの成功シナリオ

フェイスブックやインスタの次をねらう「FiNANCiE(フィナンシェ)」とは? 國光宏尚氏が描くブロックチェーンの成功シナリオ

2019年3月7日、個人の夢を支援するSNS「FiNANCiE(フィナンシェ)」のオープンベータ版が公開された。個人が支援を集めたり資金調達をしたりできるサービスは、クラウドファンディングやサロンサービスをはじめこれまでも存在する。FiNANCiEが特徴的なのは、ブロックチェーンを使うことで資金調達だけでなく、サービスの透明性や参加者へのインセンティブなど、コミュニティ活性化につながる仕組みを実現している点だ。FiNANCiEを「承認欲求に基づく今現在のSNSに代わる次世代のSNS」と説明するプロジェクト創設者の國光宏尚氏に、開発の経緯と技術的ポイント、目標について聞いた。

FiNANCiE(フィナンシェ)」とは
「ヒーロー」と呼ばれる夢や目標を持つ人が「ヒーローカード」を発行し、それを応援するユーザーが「ファン」として購入することで、活動資金支援を実現する。ヒーローカードを持つファンは、ヒーローが募集するリワード(優待)に応募でき、早期に購入したファンはヒーローが人気になると高いインセンティブが付与される可能性がある。
ヒーローカードは、その保有権をブロックチェーン(イーサリアム)のトークンとして管理することで透明性担保や不正な改ざん防止を実現している。また、初回売出価格の決定にはダッチオークション方式を採用し、Bancor(バンコール)のアルゴリズムを用いたマーケットプレイスも提供されるなど、ヒーローカードの流動性を保つための仕組みもある。ただし、日本のファンはヒーローカードの売買を日本円で行えるため、暗号通貨の知識が一切なくても気軽に参加できる。

FiNANCiEの画面イメージ(※FiNANCiEの資料より)
FiNANCiEの画面イメージ(※FiNANCiEの資料より)
ブロックチェーンによって保有権を管理する「ヒーローカード」を介して、「ヒーロー」とそれを支援する「ファン」のコミュニティ、エコシステムが形成される(※FiNANCiEの資料より)
ブロックチェーンによって保有権を管理する「ヒーローカード」を介して、「ヒーロー」とそれを支援する「ファン」のコミュニティ、エコシステムが形成される(※FiNANCiEの資料より)

承認欲求型SNSは終焉して自己実現型SNSの時代が到来

―― FiNANCiEが生まれた背景について教えてください。

 

「新しい時代のSNS」をつくりたかったというのが一番大きな理由です。フェイスブックに代表される既存のSNSの多くでは、人々は承認欲求を満たすために使っているような状況です。しかし、そのような承認欲求をベースにしたSNSがこれから先も長く続いていくとは思えません。

 

多くの人々が、「いいね!」ほしさに脚色した写真やコメントなど、うわべを飾った人生をアップし続けています。しかしいずれは、それに対してむなしさを感じるようになっていくのではないでしょうか。

 

そのような現在のSNSに代わる次世代のSNSとはどのようなものか。僕は自己実現をベースにしたものになるのではないかと考えています。自己実現をめざして、参加者が互いに助け合うSNSをつくることはできないかと考案したのがFiNANCiEです。

 

―― こうした仕組みを思いついたのは、ご自身の投資経験からきているのでしょうか?

 

10代~20代のときの経験が大きく影響しています。高校を卒業してやりたいことが見つからず、どうしようかと将来を決めかねていた僕は、中国に4年間、そしてバックパックを背負ってアジアや北米、中南米を2年間放浪しました。最後に米国のロスで4年間を過ごし、29歳のときに日本に帰ってきました。

 

僕の場合は偶然にも良い出会いに恵まれ、起業する機会を得ることができました。しかし多くの人、特に若い人の場合は、どうやって出会いをつくるのか、どうすれば夢を叶えられるのかなど、チャンスのつかみ方がわからないことが多いはずです。そのような人たちがチャンスをつかめる機会を作り出すことができれば、今までになかった新しいイノベーションが起こるのではないかと考えています。

國光宏尚氏 株式会社フィナンシェ Founder/株式会社gumi 代表取締役会長
國光宏尚氏 株式会社フィナンシェ Founder/株式会社gumi 代表取締役会長

新技術を牽引するのはゲームとコミュニケーション

―― 國光さんは常々「ブロックチェーンじゃないとできないことをやっていきたい。そのキラーユースケースになるのはゲームとソーシャルネットワークだ」と仰っています。それはなぜですか?

 

ITやインターネットの歴史を振り返ると、それらが発展を牽引してきたからです。

 

登場したばかりのテクノロジーは、すぐには使い物にならないことが多いです。そんなときでも人々に求められるものとは、まず人間の欲求に忠実なジャンルであること。さらに目新しいテクノロジーが用いられていてトラブルも多いとなると、ユーザーに高いリテラシーや寛容さが求められます。それらを満たすのがゲームとコミュニケーション、そしてエロです(笑)。いつもこの3つが最初のユースケースとなって市場を引っ張ってきました。

 

パソコンが登場したときに、みんなが最初に夢中になったことは、スティーブ・ジョブズもビル・ゲイツもマーク・ザッカーバーグも、みんなゲームなんですよ。僕だってそうでした。

 

次にインターネットが現れたときも、みんなゲームから入りました。それに続いて、チャットやBBSといったコミュニケーションサービスが生まれていった。ケータイが出てきたときもスマホが出てきたときも同じです。今盛り上がっているVRもそう。始まりはいつも、ゲームとコミュニケーションとエロなんです。僕がgumiを創業して最初に取り組んでいたのもSNSでしたし、その後はゲームによって大きく成長できました。だから、SNSには人一倍強い思いを持っています。

 

ブロックチェーンがある意味不幸だったのは、技術的には未成熟であるにもかかわらず、最初のユースケースがいきなり「投資」という、高い信頼性や安全性が求められる金融領域だったことです。だからこれほど大問題になり、注目も集めることになってしまいました。

 

今のブロックチェーンは正直、まだまともに使えるテクノロジーとはいえません。これからさまざまな問題を解決していきながら、使い物になるところまで育てていく必要があります。これからの数年間、ゲームやコミュニケーションの分野でブロックチェーンのユースケースを増やしていくことでテクノロジーが成熟し、ミッションクリティカルな用途にも使われるようになるはずです。僕はそんな時代の到来を心待ちにしています。

ユーザビリティ優先でオンチェーンとオフチェーンを使い分け

―― 技術的チャレンジとして、オンチェーンとオフチェーンの使い分けと融合に力を入れたということですが、具体的にはどのような部分でしょうか?

 

開発当初は、すべてをオンチェーンとして実装しようとしていました。しかし、お話ししたようにブロックチェーンは技術的に途上段階です。ユーザビリティを考慮すると、絶対に必要なところはオンチェーンで実装し、それ以外はオフチェーンで実装することが現実的かつ最適解であるという結論になりました。

 

その「絶対に必要なところ」とは、ヒーローカードの保有権であるERC20トークンの管理、Bancorアルゴリズム、そして初期売り出しの逆オークション。これらはブロックチェーン技術を利用する必要があります。それ以外はオフチェーンにて処理していますが、ここで言う「オフチェーン」とはセカンドレイヤーやサイドチェーンのことではなく、一般的なウェブサービスのことです。

 

イーサリアムには、スケーラビリティ問題を解決するPlasma(プラズマ)というサイドチェーンがありますが、それさえもまだ成熟段階に達しているとはいえません。ユーザーのお金を扱ううえでは安全性が必須であり、万が一何かあったときにユーザーの資産を守り、リカバーできるように既存のEC決済の範囲で行っています。

 

苦労したのは、オンチェーンとオフチェーンをシームレスに連携して決済できるようにしたことです。ブロックチェーン技術が公開されて以来、世界でもっともユーザビリティについて考えたブロックチェーンサービスの一つだと思いますよ。たとえばMetaMask(メタマスク)を使ってトークンの管理や取り扱いをするというのは、一般のユーザーにとっては難しすぎますよ(笑)

 

ただし、今後テクノロジーが成熟していけばブロックチェーンで処理できる範囲が拡大して、オンチェーンでの処理が進むはずです。

 

―― ヒーローカードを発行する部分は、ERC20ではなくERC721で固有のカードとして扱う選択肢もあったかと思います。やはり、マーケットプレイスでの流動性などを優先させてERC20にしたのでしょうか?

 

まさにおっしゃるとおりで、FiNANCiEにはERC20トークンの「可算」(すべて同じ価値を持つものとして扱える)という特性が適していると考えたからです。ERC721トークンにしてしまうと分割できないし、個別に価値を持つことになるため、相対取引でしか金額を算出することができません。

 

―― ERC20トークンにしたことで、マーケットプレイスを介さずにユーザーどうしで直接取引できるようにする可能性はあるのでしょうか?

 

技術的には可能ですが、日本では法律的な課題があるため、現状はあくまでもFiNANCiE内だけの取引としています。ただしグローバル版については、法律的に整理できた国であればユーザーどうしが直接取引できるようにしていきたいとは考えています。

 

ERC20ベースなので、技術的にはイーサリアムのブロックチェーンをベースとしたトークンです。とはいえ、FiNANCiEは暗号通貨に慣れ親しんでいる人だけがターゲットのサービスではありません。むしろ、暗号通貨はよくわからないという人にこそ使ってほしい。暗号通貨の取引を扱わないようにしたのは、何よりもユーザーエクスペリエンスを優先し、日本円で決済させることで間口を広げていこうと考えたからです。

 

FiNANCiEの目的はあくまでもヒーローを応援すること。透明性を担保するためにブロックチェーンを採用し、流動性のためにBancorのアルゴリズムを取り入れました。ダッチオークション方式を取り入れたのも、ヒーローカード価格決定プロセスの透明化です。自己実現するコミュニティにすることを主眼に仕組みを練り、テクノロジーを選定しています。

年内に100万人の参加ファンを目標に夢の実現を支援

―― ヒーローとそれを支持するファンという構図のコミュニティサービスは他にもあります。その中には、著名人や話題づくりに長けた人だとファンが押し寄せて一時的に盛り上がるものの、しばらくすると一気に去っていくという例もありました。こうした状況を防ぐ方法はあるのでしょうか?

 

初期のヒーローには、すでに成功したとされるような著名人は含まれていません。こちら側で選定して、特定の分野では実績や実力があるけれど、世間一般での認知はまだそれほど高くないという方々を集めました。彼らが取り組んでいる内容は利益の追求ではないものが中心です。ヒーローの参加者数は、オープンベータ版の段階では10人程度からスタートし、2019年5月の正式リリース時には40~50人を目指しています。

 

―― ヒーローの選定はあくまでもFiNANCiE側が行うわけですね?

 

初期段階ではそうです。トラブル防止の意味でもFiNANCiE側でしっかりと審査し、コミュニティ運営のサポートも行いながら、成功パターンをつくりたいと考えています。将来的には、希望する誰もがヒーローになれるようなサービスにしていきたいです。

 

FiNANCiEの開発ロードマップ

 

―― FiNANCiEには「ヒューマンキャピタリスト」という存在がいますが、どのような役割なのでしょうか?

 

起業家にとってのベンチャーキャピタリストに近い役割を担います。ただ資金的な支援をするだけでなく、若くてやりたいことがあるけど、どう叶えたらいいかわからないというヒーローに寄り添い、どうすれば成功できるか綿密なアドバイスをして、二人三脚の運命共同体のように成長していくイメージです。昔でいえば、芸術家に対するパトロンのような存在です。

 

―― 当面の具体的な目標は?

 

2019年末までに、皆に応援したいと思われるような夢や目標を持ったヒーローを増やし、100万人のユーザーに利用してもらうことが目標です。ただし、単に数を増やそうというのではなく、まずはフィナンシェのプラットフォームから夢の支援が実施されている事例を1つひとつきっちりとつくって、ファンからしっかりとサポートされてるヒーローを出していきたいと思います。

 

ヒーローとファンの双方が幸せになれるプラットフォームにすることが何よりも重要です。スキルや資金をもつファンが協力しあってヒーローを後押しすることで、その夢が実現する。それが理想だと考えています。

 

構成:石川 香苗子
編集:仲里 淳
写真:友澤 綾乃

 

Profile

國光 宏尚(くにみつ ひろなお)
株式会社フィナンシェ Founder
株式会社gumi 代表取締役会長
2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、さまざまなインターネット関係の新規事業を立ち上げる。2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups株式会社を設立し、代表取締役に就任。2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。2018年、gumi Cryptos匿名組合を組成し、ブロックチェーン事業に参入。2019年3月、ブロックチェーン技術を活用したドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」を手がける株式会社フィナンシェを創業。