「コンテンツ東京2019」で見つけたコンテンツビジネス×ブロックチェーンの新鋭企業たち

「コンテンツ東京2019」で見つけたコンテンツビジネス×ブロックチェーンの新鋭企業たち

4月3日~5日、東京都江東区の東京ビッグサイトでビジネス展示会イベント「コンテンツ東京2019」が開催された。その構成展示会の1つである「第7回コンテンツ配信・管理ソリューション展」内において、今回から「ブロックチェーンゾーン」が新設され関連企業が出展した。コンテンツビジネスという領域でどのような企業がブロックチェーンに取り組んでいるのか、展示内容と会場の様子をお届けする。

コンテンツビジネスにブロックチェーンを取り入れたサービスたち

ブロックチェーンゾーンへの出展は以下の9社による6ブース。あくまでもコンテンツビジネスに関するビジネス展示会という性質上、参加企業の多くは関連した分野の製品やサービスを主軸としている。

  • 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(ソニー・グローバルエデュケーションと合同)
  • 株式会社アートリガー
  • 株式会社アイコール(株式会社Arc、株式会社ウェブストリームと合同)
  • 株式会社LastRoots
  • CFUNジャパン株式会社
  • クリプトグランズウェル合同会社

経産省が報告書を公表したように、ブロックチェーンとコンテンツビジネスの相性は決して悪くはない。今回の出展社から、次代を担うサービスが生まれてくるかもしれない。

リリース:ブロックチェーン技術を活用したコンテンツサービスに関する報告書を公表しました(経済産業省)

現場の課題になっている煩雑な音楽著作権管理を簡略化

ソニー・ミュージックエンタテインメントは、ソニー・グローバルエデュケーションと共同でブロックチェーンを使ったデジタルコンテンツの権利情報処理システムの展示を行った。

ソニー・ミュージックエンタテインメントとソニー・グローバルエデュケーションの合同ブース。取材時は、ブース中央上部に翌日リリース予定の内容があり隠されていた

これはもともと、ソニー・グローバルエデュケーションが開発した「教育データの認証・共有・権限管理システム」をベースに、デジタルコンテンツに関わる権利情報を処理する機能を追加したシステムとなる。

 

音楽の分野では、音楽著作権の管理のためのコストが大きな課題になっている。長い歴史を持つ分野であるため、現在も紙の書類でやりとりされていることが多くあるという。

 

音楽著作権の管理といえばJASRAC(日本音楽著作権協会)が中央管理システムとして存在しているが、すべてを管理しきれているわけではない。現実には現場レベルのやりとり、契約書まで至らない覚え書きや取り交わしなどが存在し、それらは紙ベースで行われているという。場合によっては、音楽クリエーター自らこれらの煩雑な作業を行うことになり、それが現場の課題になっていた。このような処理作業に費やすコストをもっと省力化できないかと考え、目を付けたのがブロックチェーンだったという。

 

システムはオープンソースのブロックチェーン技術であるHyperledgerで構築し、現在は利用対象者である音楽事業者内でコンソーシアムチェーンとして利用するような提案を行っているという。

 

なお、取材は4月4日に行ったが、翌4月5日に同社はブロックチェーンやAIを活用した音楽制作プラットフォーム「soundmain(サウンドメイン)」を発表した。ソニーグループでは、各社連携しながらブロックチェーンの研究や活用に取り組んでおり、著作権管理システムやsoundmainはその成果となる。

 

リリース:音楽制作プラットフォーム「soundmain(サウンドメイン)」 ティザーサイトをオープン 〜 ブロックチェーン、AIなどのテクノロジーでクリエイターを支援 〜(ソニーミュージック)

デジタルコンテンツグループ 企画推進チーム プロデューサーの後閑研一氏

クリエイターと企業の理想的なマッチング環境

アートリガーは、クリエイターと企業のマッチングを行うウェブサービス「FOLLY(フォリー)」の展示を行った。

アートリガーのブース

FOLLYは、ウェブデザイナーや写真家といったクリエイターが自身のプロフィールや作品を登録しておくことで、その作品やスキル必要とするを企業が検索したり問い合わせたりできる。ここまでならよくあるサービスだが、FOLLYでは企業がクリエイターに連絡したり、作品を利用(購入)したりする場合に、ブロックチェーンを使った独自のトークン「WOW!」を購入する必要がなる。

 

個人クリエイターと企業との交渉において、事前の打ち合わせや交渉にさんざん時間や手間を費やしたものの、たいした実入りにならなかったということはよくある。そこでFOLLYでは、企業との交渉=コミュニケーションをシンプルに行えるシステムにし、さらにWOW!という対価も得られるようにすることで、クリエイターが本来の活動に注力できるようにしている。

 

企業側がクリエイターに連絡するために必要なWOW!は高額ではないが、無料でないことによって中途半端な連絡は控える効果が期待できる。クリエイターにとっても、本気度の高い連絡だけに絞られるので好ましい。

 

なお、ブロックチェーンの実装面に関する詳細までは聞けなかったが、同社ではコンテンツの二次流通をブロックチェーンで管理する特許を取得しており、今後さらなる機能拡充やサービス拡大が予想される。

代表取締役/CEOの堺谷円香氏

新作DAppsゲームとブロックチェーンCMSをアピール

ウェブシステムの開発や提供を行ってきたアイコールでは、ブロックチェーンをさまざまな形で導入できるソリューション「ブロックチェーンCMS」とDAppsゲーム「ウォレットバトラー」の展示を行った。

アイコール、Arc、ウェブストリームの合同ブース

ブロックチェーンCMSを使うと、たとえば社員どうしでトークンを送り合える社内通貨システムを簡単に構築できる。感謝や応援の気持ちを具体的かつ気軽に伝えられるなど、コミュニケーションの促進につながるほか、取得したトークンは社内サービス(お菓子の購入など)に利用できるので、福利厚生の一環にもなるという。ほかにも、ECサイトを暗号通貨決済に対応させたり、独自トークンを発行したりする機能を提供できる。

 

また、開発中の「ウォレットバトラー」は、ERC721を利用したキャラクター対戦型のブラウザー向けDAppsゲーム。3×3のマス目に自身のキャラクターを配置して戦うが、各キャラクターが持つ特性に加えてどう配置するかが勝負に影響するという。6月のリリースを目標にしており、開発はアイコール、運営はArcが担当するという。

新規事業立上げ室 マネージャーの藤本吉春氏

通貨の発行・運用の知見を活かしたコンサルティングサービスを訴求

LastRootsは、暗号通貨「c0ban」の開発や取引所運営、ICOの実施など、これまでの経験を活かしたコンサルティングサービスの訴求を行った。

LastRootsのブース

同社では、DAppsやトークンの設計・開発、マイニングサービスなど、ブロックチェーン関連の開発を幅広く行っている。また、c0banの付与をインセンティブとして、動画広告の視聴を促すプラットフォーム「c0ban.tv」など、独自サービスの開発・提供も行っている。

 

現時点では仮想通貨交換業のみなし業者という立場であるため、暗号通貨の売買ビジネスは積極的に訴求していないという同社だが、3月に株式会社オウケイウェイヴを引受先とする3.5億円の第三者割当増資を行っている。ブロックチェーンに注力する両社だけに、今後は互いのリソースを集約して事業強化を行うことが期待される。

コーポレート本部 人事部の片渕雄斗氏

漫画コンテンツの海外展開プラットフォーム「CFUN」

CFUNジャパンは、二次元コンテンツの著作権や報酬、作品の流通などをブロックチェーンで管理するプラットフォーム「CFUN」の展示を行った。

CFUNジャパンのブース

CFUNは、もともとは創業者であるデニス・ジア氏が中国でプロジェクトを起こしたが、暗号通貨ビジネスに対する規制強化を受けて米国に拠点を移したという。米国でのSTOによる資金調達などを経て、現在はおもに中国圏の読者に向けてサービスを提供しているという。

 

コンテンツの購入には暗号通貨が必要となるため、利用者がまだ少なく法規制もある日本は読者の市場(消費地)とは見ていない。一方で、企業や個人クリエーターを含めてコンテンツの供給地としては日本や米国、韓国の存在は欠かせない。クリエーターの発掘やコンテンツを持つ企業とのアライアンスを強化するために日本法人を設置し、今回のイベントにも出展したという。

ファウンダー&CEOのデニス・ジア氏

エンタメ系コンテンツで一般層へのブロックチェーン普及を促進

クリプトグランズウェルは、NEMモザイクを使ってグラビアアイドルの画像をアセット(資産)化した「DLビジュアルカード」や創刊準備中のフリーペーパーなどの展示を行った。

クリプトグランズウェルのブース

同社はCEOの芳井理氏が主体となり、ブロックチェーン関連のサービスやイベントなども手がけており、プロジェクトを人材やリソースを編成しているという。

 

芳井氏は、「今回のイベントに出展してみていろんな人と話をしたが、8割くらいはブロックチェーンを知らない。IT系の事業者も多く出展しているイベントでこの状況なので、まだまだ認知を広げる必要があると強く感じた」とのこと。

ブロックチェーンや暗号通貨を一般の人々にも普及させるには、その応用例をわかりやすい形で見せる必要があると考え、エンターテインメント領域を中心にプロジェクトを考案して取り組んでいきたいという。

「コンテンツファースト次世代ブロックチェーンゲーム」を標榜する開発中のゲーム「クリプトガールズフロントミッション」のイメージビジュアル。「東京ゲームショウ2019」での発表を目指しているとのこと

 来年は「ブロックチェーンEXPO」として拡大開催

展示会全体の印象としては、従来からあるコンテンツ制作やマーケティング、クリエイター関連の展示が注目を集めていた。特に今回は、VTuberやVR/MR関連の派手でキャッチーな展示が多く、人の波も集まっていた。それに比べるとブロックチェーンはまだ「知る人ぞ知るテーマ」であり、出展社数やブースの規模としても小さいというのが率直な感想だ。しかし、来年は「ブロックチェーンEXPO」として独立展示会となることがすでに決まっている。

 

めまぐるしく変化するブロックチェーン業界の1年先を予想することは難しいが、主催者が手応えを感じ、高い成長性があると判断したと考えれば、明るい兆しといえるだろう。

 

取材日:2019年4月4日

取材・文・写真:仲里 淳