ブロックチェーン採用のアートプラットフォーム「B-OWND」がサービス開始

ブロックチェーン採用のアートプラットフォーム「B-OWND」がサービス開始

2019年5月10日、株式会社丹青社はアートプラットフォーム「B-OWND(ビーオウンド)」を開始した。B-OWNDでは、登録されたアート・工芸作品の閲覧と購入ができるマーケット機能に加えて、アーティストや作品をアピールするためのメディア機能、作品の真贋と流通管理機能を備える。サービス開始に先立ち、4月19、20日には東京都銀座でプレイベントが開催され、サービスの詳細説明や参加アーティストの紹介、作品の展示が行われた。その内容をもとに、B-OWNDの概要とブロックチェーンを用いたポイントについて解説する。

 

関連記事:数百年続けるからこそブロックチェーン ― スタートバーン 施井泰平氏×丹青社 吉田清一郎氏

「B-OWND」がめざすのは、日本のアーティスト・工芸家と世界中のコレクター(購入者)、キュレーター・美術評論家を直接つなぐプラットフォームだ

ブロックチェーン証明書で将来価値をアーティストに還元

作品を購買するだけでなく、アーティストとコレクター、キュレーターのコミュニケーションや三者の相互評価が行え、それらが一般ユーザーに対しても可視化されることで、アート・工芸の新たな価値を生み出すねらいがある。

 

注目は、作品の真贋と流通管理機能をブロックチェーン技術によって実現している点。このブロックチェーンとして採用されているのが、スタートバーン株式会社が開発・提供する「アートブロックチェーンネットワーク(ABN)」だ。

 

スタートバーンは「アートの課題をテクノロジーで解決する」ことをミッションに掲げ、2014年に設立された東京大学発のスタートアップ企業。資金調達を成功させるとともに、実サービスの開始にこぎ着けた数少ないブロックチェーンプロジェクトとして業界でも注目を集めている。そんな同社のABNはイーサリアム上で稼働しており、アート作品にひも付く情報を記録することで証明書の役割を果たす。

 

アート市場では、作品の真贋鑑定、新品市場と中古市場の相互影響による価値創出、過去の所有者経緯が重要とされている。ブロックチェーンによる証明書を実現することで、作品の付加価値と真贋を担保したうえで、Eコマースによる売買が可能になる。

 

丹青社は、商業・文化施設などの空間づくりを事業の柱としてきた企業。その「空間づくり」に欠かせないのがアート・工芸作品であり、同社とは深いかかわりがある。しかし、日本におけるアーティストや工芸家の環境は厳しく、特に伝統工芸品産業の従事者はこの40年間で約1/5にまで減少。また、世界のアート市場規模が約6兆7,500億円と言われているなかで、対する日本は約2,400億円しかなく、文化庁も活性化を模索している状況だ。

 

これらの課題を前に、アーティストや工芸家を支援する術はないか。丹青社がたどり着いたのが、従来の複雑なアート市場をもっとシンプルにして、一般層にもアクセスしやすい存在にすることで、アートの認知を高めるというアイデアだ。そしてスタートバーンがABNで実現しようとしていることも、実はアーティストの支援である。作品の価値が将来高騰したとき、ブロックチェーンに記録された来歴情報をたどることで、アーティスト本人は過去の評価者に経済的な還元が可能になる。これまでは難しかった二次流通・販売以降のリターンを得られるようになれば、アーティストの環境は向上する。

 

同じ志向をもった両社が出会い、互いのアイデアを持ち寄って具体化したものがB-OWNDである。

ブロックチェーン作品証明書によって、アーティストは二次流通・販売先のリターンを得られるようになる

前述のような経緯もあり、B-OWNDではまず日本の伝統工芸品を対象にし、現代アートの作品や作家は対象にしないという。日本の伝統工芸と呼ばれてきたものをアート工芸として打ち出し、現代アートと比べても遜色ない価値をもつものであるということを世界に発信していく。

会場でひときわ存在感を放っていた若宮隆志氏の作品
「伝統工芸品」のイメージをくつがえす中村弘峰氏の作品

 

取材日:2019年4月19日

取材・文・写真:仲里 淳