資金決済法&金商法の改正間近! 施行に向けてブロックチェーン事業者は何をすべきか

資金決済法&金商法の改正間近! 施行に向けてブロックチェーン事業者は何をすべきか

資金決済法と金商法の改正が間近に迫っている。仮想通貨に関する内容を多く含む今回の改正に対して、ブロックチェーン事業者はどのような準備をしておけばよいのか。このテーマに詳しいアンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合健氏らが4月に開催したセミナーの内容からヒントを探る。

間近に迫る改正法案の成立

2019年3月15日、仮想通貨(暗号資産)にかかわる法規制が盛り込まれた「資金決済に関する法律」(以下、資金決済法)と「金融商品取引法」の改正法案が日本政府によって閣議決定された。正式名称を「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」とするこの法案は、その後衆議院での審議を経て5月21日に可決。現在は参議院による審査・審議が進められている

※本稿公開後の2019年5月31日に、参議院本会議において可決され、原案通りで成立。6月7日に政府によって公布された。

「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更が話題になったが、現在そして将来的に暗号資産やブロックチェーンに取り組む事業者にとっては、以下のトピックが重要となるだろう。

 

  • 暗号資産カストディ業務に対する規制の追加
  • 広告・勧誘規制の整備
  • 利用者財産の保全義務の強化
  • セキュリティ・トークンに関する規制
  • 暗号資産デリバティブに関する規制

 

法改正に向けて業界の関心が高まるなか、4月3日に東京都丸の内のイベントスペース「丸の内vacans」においてセミナー「暗号資産及びセキュリティ・トークンに関する法改正の概要」が開催された。主催はアンダーソン・毛利・友常法律事務所で、所属弁護士である河合健氏、青木俊介氏、長瀬威志氏が登壇した。

 

セミナーは以下の五部構成で行われた。いずれも重要なトピックといえるが、第五部では特に具体的な実務対応について、改正法案施行後の動向予想などを踏まえながら河合氏から説明が行われた。本稿では、この第五部の内容を中心に暗号資産やブロックチェーン関連の事業者にとって参考になる情報をまとめる。

 

  • 第一部 資金決済法改正案について
  • 第二部 セキュリティ・トークンに関する規制について
  • 第三部 暗号資産デリバティブ規制について
  • 第四部 暗号資産を用いた不公正取引規制について
  • 第五部 経過措置及び実務対応について

 

(右から)セミナーに登壇した弁護士の河合健氏、長瀬威志氏、青木俊介氏(いずれもアンダーソン・毛利・友常法律事務所所属)

経過措置と実務対応

改正法の施行時期は、公布から1年以内となる。現時点(5月29日)では参議院での審議が進められているが、まもなく可決されるとすれば、2020年4~6月ごろの施行と予想される。なお、前回2017年の改正資金決済法は、4月1日から施行された。

 

今回は、暗号資産交換業を行っている事業者と金融商品取引業を行っている事業者が規制対象となるが、経過措置としてはどちらもほぼ同じと考えてよい。

 

改正法施行時において「暗号資産の管理を業として行っている者」(つまりカストディ業者)は、施行日から2週間以内に、その商号と住所を届け出る必要がある。

 

次に、施行日から6か月以内に正式な登録申請を行うことで、その後も業務が継続できる(みなし業者)。ただし、その業務範囲は「改正施行日に行っている業務の範囲に限る」とされる。そして、施行日から1年6か月を過ぎても登録が受けられていない場合は、業務を継続できない。

 

みなし業者として業務継続するためのポイント

  • 施行は公布から1年以内
  • 施行から2週間以内の商号・住所の届け出
  • 施行から6か月以内の登録申請
  • 施行から1年半以内の登録受理

特に注意したいのは、「みなし業者である間は、改正法施行時において現に行っている業務の範囲を超えて、新しいプロダクトの取り扱いや新規顧客の獲得はできない」という部分。施行直前に駆け込みで業を開始しても手遅れになる。

 

この背景には、前回の仮想通貨交換業において、みなし業者がさまざまな問題を起こした反省がある。当時、施行日直前に少しだけ取引をして既成事実を作るという動きが多く見られたが、今回それは通用しないということになる。したがって、みなし業者になるには、早めに業務を開始しておく必要がある。

登録申請にかかる期間は1年以上を想定

仮想通貨交換業の登録は、「1年以内に受理されるなら早いほう」というイメージがある。今回も同程度の期間が必要とするなら、仮に施行が2020年4月1日からだとすると、6か月後の9月30日が申請の期限になる。そこから6か月間で登録申請を受理してもらうのは、現状を見ると難しい。少なくとも1年程度はかかると考え、早めに準備をしておくべきだろう。

 

ただし、実務の指針となる内閣府令や政省令、監督指針、ガイドラインの改正案が定まるのは法律ができてからで、早くても10月から年末にかけてと予想される。質問票やチェックリストは、さらにその後。場合によっては翌年になることもありえる。本来はそれを確認してから始めるべきだが、現実的にそれでは間に合わない。

 

もう1つのポイントとして挙げられるのが、「みなし業者の商号・住所の届け出を2週間以内に行う」という点。これは仮免許のようなものともいえるが、実際には本免許を持っている場合と同じ義務が課せられ、法令規制を背負うことになる。前回は「誰がみなし業者か」を申請する必要はなかったが、今回は申請を行う。そのため、翌日に立ち入り検査が行われる可能性もある。

 

上記の話は、施行日までにしっかりとした態勢を整えておかないと、みなし業者になるのはリスクがともなうという意味でもある。そのため、みなし業者を選択するかしないかの判断そのものも重要となる。

 

まとめると、施行日までにいつ検査が入っても耐えられる態勢作りが必要であり、それが可能ならみなし業者になっても問題はない。みなし業者になるのは、たとえるなら「海図なしで航海に出るようなもの」であり、大きなリスクをともなうことを認識しておかなければらならない。

現行の類似ケースを参考に対応

事業者にとっての現実的な対応として、暗号資産交換業であれば仮想通貨交換業向けの質問リストが参考になる。450項目以上ある質問リストのうち、売買と交換に関する項目を除いたものと考えればある程度は想像・予想がつけられるので、それを念頭に準備を進める。

 

金融商品取引業については、FXタイプのものであれば、すでに確立している現在の第一種金融商品取引業の登録申請内容が参考になる。金融先物取引業協会のガイドラインも参考にできるので、まったく指針がないわけではない。現行のよく似ているものを参考に準備を進めることが現実的だろう。

兼業におけるメリットとデメリット

ビジネスを行ううえで、暗号資産交換業と金融商品取引業の2つを取得する場合のメリットとデメリットはどのようになるのか。兼業するなら、当然ながら両方のライセンスが必要となる。また、自己資本規制比率の適用も受けることになる。

 

リスクとしては、片方の事業で問題が生じて業務改善命令などを受けた場合、全体のオペレーションが止まってしまうおそれがある。単一の事業会社でやるには、業規制対応が大きな負荷になる。

 

一方メリットとしては、自分たちの1つのサイトから複数のサービスを提供できるし、個人情報の共有もしやすい。別会社での運営となると、別々のサイトにそれぞれアクセスしてもらう必要があるため、ユーザービリティやユーザーエクスペリエンスを損ねるおそれがある。これらのメリットとデメリットを見極めながら、判断しなければならない。

会場となった丸の内vacansには数多くの来場者が詰めかけ、同テーマに対する関心の高さを伺わせた

 

取材日:2019年4月3日

取材・文・写真:仲里 淳