村井純氏「ブロックチェーンはインターネットが次のステップに進むためのインフラ」― Interop Tokyo 2019先行レポート

村井純氏「ブロックチェーンはインターネットが次のステップに進むためのインフラ」― Interop Tokyo 2019先行レポート

6月12日、ネットワーク技術と製品のイベント「Interop Tokyo 2019」が幕張メッセ(千葉市美浜区)で開幕した。今年で26回目となり、会期は14日までの3日間。初日に行われた基調講演の1つ「インターネットから見たブロックチェーンの発展」では、BASEアライアンスのメンバーが登壇してそれぞれのブロックチェーンに対する取り組みや考えを示しながら討論が繰り広げられた。本稿では、基調講演の先行レポートとして慶應義塾大学の村井純教授によるスピーチの一部をお届けする。

 

※BASEアライアンス:ブロックチェーン技術全般についての研究・開発や実証実験、国際的な産学連携コミュニティの醸成などに取り組みながら、アカデミアの視点でブロックチェーン関するオープンな議論を行っている組織

ブロックチェーンの本質は「中央制御ではない」こと

今回の講演タイトルは、「インターネットから見たブロックチェーンの発展」です。トップバッターとしてお話しする私の役割も、インターネットから見たブロックチェーンという視点で語るということでしょう。

 

ブロックチェーンは、インターネットを前提として、その上で動いています。先日、福岡でG20財務相・中央銀行総裁会議が行われました。G20の目的は、金融のレギュレーションを決めることで、それにかかわる人たちが集まります。そこでブロックチェーンも話題になりました。

 

暗号資産、DLT(分散台帳技術)、ブロックチェーンとビットコインとの違いなど、言葉の定義を含めいろいろな問題があります。それでも、金融規制を決めている人たち、私たちのようなインターネットを担っている人たち、そしてブロックチェーンを作っている人たちが一堂に集まることは、とても重要な機会だったといえます。

 

インターネットからブロックチェーンを見たとき、キーワードになるのが「decentralize(非中央集権・分散)」、つまり「中央制御ではない」ということです。そしてこれは、インターネットの基本的理念でもあります。インターネットは恐ろしいほどに、完全な自律分散型システムとして動いています。みんなが少しずつ作り、それらが連携することで1つのシステムとして動いています。

 

インターネットには王様のような存在はおらず、中央が制御することもなく、みんなが力を合わせることできちんと動作し続けます。すでに40~50年間も地球上で動いていて、誰もオーナーではない。このような仕組みこそがインターネットの本質です。

 

では、ブロックチェーンはどうでしょうか。さまざまな見方がありますが、「中央制御ではなく、きちんと動き続けることが期待されるシステム」です。これはある意味、インターネットと同じ役割をもっているといえます。

村井純氏 慶應義塾大学 環境情報学部 教授/大学院政策・メディア研究科委員長/慶應義塾大学SFC研究所 ブロックチェーン・ラボ代表

ブロックチェーンは次のステップに進むためのインフラ

インターネットのカバレッジがここまで広がってくると、それに乗り遅れる人はいなくなります。インターネットには、「The Internet is for Everyone(すべての人々にインターネットを)」という悲願があります。現在の到達率は、全人類の人口としては6割を超えました。日本では9割以上の人口がインターネットにアクセスできます。

 

これがブロックチェーンや、その発展の元になったファイナンスシステムと組み合わされることで、すべての人が経済活動に参加できるようになります。そしてこれは、インターネットがもっていた使命でもあります。その使命を果たすために、インターネットにはどのような仕組みが必要か。その答えこそブロックチェーンではないか。そういう期待感があります。それに対して何が大きな課題となっているのか。

 

インターネットができたとき、各国は電話というシステムをもっていました。電話は、政府とともに発展した分散型ネットワークを形成していました。その上にインターネットというグローバルな1つの仕組みを作っていったことで、両者の関係が曖昧になりました。

 

これまで、既存の電話システムとインターネットの関係は、さまざまに変化してきました。初期のインターネットは、明らかに電話システムの上に仮設したインフラでした。それが、徐々にネイティブなインターネットになっていきます。光ファイバーも電波も、電話ではなくインターネットのために作っていきましょうとだんだん変わってきて、ついに5Gではそれが実現されました。

 

このアナロジーは、ブロックチェーンやその上で動く暗号資産にとって、大きく関係してくると思っています。既存の金融・銀行システムがあり、それに対して暗号資産はグローバルなものとして動いています。両者の関係をどうするかが大きな課題です。

 

いずれにしても、インターネットというものが生み出した、次のステップに進むためのインフラになる位置にブロックチェーンは立っているのではないか。私はそのようにとらえ、現在ブロックチェーンにかかわっています。

 

◇ ◇ ◇

 

現在ブロックチェーン業界では、技術的な課題だけでなく法的規制も立ちはだかっている。インターネットの創世からかかわり、その発展を目指して郵政省(現在の総務省)に対して強く働きかけてきた村井氏が語った内容は、ブロックチェーンの今後を示唆するものといえるのではないだろうか。

 

基調講演ではこのあと、慶應義塾大学の鈴木茂哉氏をモデレーターに各パネリストによるスピーチと討論が行われた。その模様は、あらためて全体レポートとしてお届けする予定だ。

 

 

 

構成・写真:仲里淳