NFTの可能性を探る ― 将来はメルカリ超え? 二次流通市場の最新動向と相場形成に必要な条件

ブロックチェーンのNFT(ノンファンジブルトークン)を利用したサービスが増えるにつれて、それらのトークン(アセット)を取引する二次流通市場(セカンドマーケット)が注目されている。OpenSeaなど取引サービスも登場しているが、今後NFT取引は拡大していくのか。9月5日、東京都内にあるブロックチェーン特化型コワーキングスペースのNeutrinoで開催されたイベント「ブロックチェーンデータで紐解く2019年上半期のNFTマーケット」では、現在の市場考察と今後の展望が語られた。

 

本イベントは、前半が株式会社メタップスアルファのメンバーによるNFT取引市場およびNFTゲームの動向、同社新サービスの「miime(ミーム)」の紹介、後半がNFTやトークン活用に詳しい識者たちによるパネルディスカッションという構成で進められた。本稿では、イベント前半のNFT取引市場およびNFTゲームの動向についての発表をまとめる。

バーチャルとリアルの融合において鍵となるのがNFT

最初に登壇した成田博之氏は、NFT二次流通市場の最新動向について説明した。メタップスアルファでは、ブログで毎月NFTの市場レポートを公開しており、今回は2019年上半期の動向をまとめた内容となった。

(左)成田博之氏 (右)徳地佑悟氏 ともに株式会社メタップスアルファ
(左)成田博之氏 (右)徳地佑悟氏 ともに株式会社メタップスアルファ

OpenSeaなどのマーケットプレイスやゲーム内マーケットのトランザクションを対象に集計したところ、2019年上半期(1月~6月)のユーザー間で取引された全世界のFNT二次流通市場規模は、売上ベースで6.4億円程度だったという。これは、メルカリにおける半年間の売上の30分の1に当たる。

 

2019年上半期のNFT二次流通市場の概観(かっこ内は2018年下期比)
● 取引数:395,000(49%増加)
● MAU:平均167,000(37%増加)
● 取引高:339,000(ETH建。約6.4億円程度)(67%増加)

 

メルカリに対しての比較だと、30分の1という数字をどう評価すべきか難しいところだが、NFT取引の市場が生まれてまだ間もないことを考えると悲観すべきではないと成田氏は語る。

 

「2017年11月に最初のNFTとしてCryptoKitties(クリプトキティーズ)の売買がスタート。2018年6月にNFTマーケットプレイスのOpenSeaが登場して二次流通市場が始まった。歴史としてはトータルでまだ2年程度しかない。それを考えると、現在の6.4億円という数字は悲観的にとらえず、これからに期待すべきだろう」(成田氏)

 

米ドル建とETH建で比較した場合、4月以降はETHは下落傾向にあるが、米ドル建で見ると横ばい。フィアットだと横ばい。このとき、相場市場を見てみると、ETHの価格が上昇していた。これはつまり、NFT取引を行うユーザーは、フィアット(米ドル)基準で価値を見ているのではないかという。

 

タイトル別に見ると、取引高トップ15は「My Crypto Heroes(MCH:マイクリプトヒーローズ)」、次いで「CryptoKitties」「HyperDragons」などが続く。2018年下期では、MCHは7位だったので大きく成長したといえる。また、同時期に1位だったCryptoKittiesも、2位になったとはいえ依然として人気を維持しているといえるだろう。なお、2019年上期の上位15タイトルのうち、2018年下期から4割のタイトルが入れ替わっており、変化が激しい市場でもあることがうかがえる。

 

売買対象NFTのカテゴリーや特性に注目すると、ゲーム性の強いものよりもコレクション性の高いものが中心(50%)になっており、バトルものが(33.5%)、シミュレーションものが13.9%と続く。

 

また、上記以外のカテゴリーで活用例として挙げられたのが、イベント参加のチケット、ENS(イーサリアム・ネーム・サービス)のようなデジタルのもの、IP(知財)に関連づけたもの。IP関連の事例としては、Anique社が提供している「進撃の巨人」アートワーク所有権などがある。オーストリアの郵便局が発行したイーサリアムNFT付きの紙の切手「Crypto Stamp」も注目事例として紹介された。

 

成田氏は、以前から可能性として話題には出ていたものの具体的事例としては初の試みとなったMCHと「CryptoSpells(クリプトスペルズ)」のコラボレーションを「アセットに互いの世界観を投影させながら新たな価値を生み出した好例」として紹介。さらに、NFTの可能性として既存ビジネスへの付加価値創出やバーチャルとリアルの融合を挙げた。

 

「スポーツのNBAやMLB、F1などでビジネス的にも注目すべき活用例がある。すでにファンビジネスが確立され収益化もできている分野は、NFTを使って新たなビジネスチャンスを生み出せる可能性がある。さらに、VRやARのアイテムがアセット化される動きもあり、バーチャルアイテムの注目度は高まっている。バーチャルとリアルがもっと融合していくと、NFT取引の市場規模も大きくなっていくのではないか。バーチャルとリアルの融合のために鍵となるのがNFTであり、将来的にはメルカリの数十倍以上の市場規模になると期待している」(成田氏)

成田氏がセッションの冒頭で示した「メルカリの30分の1」と終盤で示した「メルカリの数十倍?」のスライド。比較対象にあえて業界の巨人をもってくるところに、市場開拓者としての強い意気込みが感じられる
成田氏がセッションの冒頭で示した「メルカリの30分の1」と終盤で示した「メルカリの数十倍?」のスライド。比較対象にあえて業界の巨人をもってくるところに、市場開拓者としての強い意気込みが感じられる

完全に固有で代替不可能なものよりも多少の類似性があるほうが取引相場が形成されやすい

続いて登壇した徳地氏は、MCHを中心にNFT取引の実情について説明した。

 

数字から見ていくと、2019年8月におけるMCHの売買参加アドレス数は881。このうち、売却のみが228、購入のみが451、両方行っているのが187。全体の27%が頻繁に売買を行っていることになるという。

 

「全体として、ほとんどのユーザーは堅実にゲームをプレイして楽しんでいる。一部、活発にトレーディングも楽しんでいるユーザーがいるという状況」(徳地氏)

 

また、仮想通貨による売買と聞くと、詳しくない人はビットコインのように価格が乱高下し、射幸心をあおるような不健全な取引になってしまうのではないかと懸念するかもしれない。しかし実際は逆で、MCHにおけるNFT価格の動きは堅実で安定したものになっているという。その理由として徳地氏は、アセットの価格がゲーム内でのキャラクター評価に連動しているからだと説明する。

 

「MCHにおけるアセットの価格は、キャラクターが登場したての性能評価期間を過ぎるとしだいに安定してくる。これは、アセットの価格がゲーム内でのキャラクターの評価に連動しているから。EHT建で価格を見ると上下があるように見えるが、実は円建だと安定している。ユーザーは円中心に価値を判断しているということ」(徳地氏)

 

このような状況で、興味深い例となったのが金太郎というキャラクターだ。他のキャラクターと同様に評価期間が過ぎて価格が安定したのち、CryptoSpellsでもアセットが利用できることが発表されたことで付加価値が生じ、第二次評価期間に入ったという。この例は、NFTゲームどうしのコラボレーションによって付加価値が生まれることを示したといえるだろう。

 

二次流通市場を考えたとき、価格が安定して活発に取引されるための条件として、徳地氏は次の3つを挙げた。

 

  1. 実用性があるもの
    取引高トップ10のうち、DAPPSが完成していて使い道があるのは半分くらい(MCHやクリプトスペルズなどが含まれる)。また、「Decentraland(デセントラランド)」は数十億円調達しているが未完成。さらにDAPPSはあっても使い道が微妙なもの(CryptoKittiesも、ネコを集める以外は繁殖させてレアアイテムを作るくらいしかすることがない)。
  2. 完全なNFTではないもの
    CryptoKittiesのようにすべてが異なる完全なNFTだと相場形成が難しい。実際、外部マーケットでは取引されていない。一方のMCHは、同種のキャラクターが多数存在することで先行取引の履歴が存在するので、それを参考にして相場が形成されやすい。
  3. 種類がある程度存在するもの
    使い道や価値の異なるアセットが複数存在することで、アセットとしての価値評価がしやすくなる(「キャラクターAよりはすぐれているが、キャラクターBよりは劣っている」など)。

 

最後に徳地氏は、既存のゲームの収益モデルが通用しないことやエコシステム構築の難しさに言及しつつ、NFTゲームの未来像として自身の仮説を語った。

 

「従来のゲームでは、離脱したゲームのアセットは再利用されないという前提でビジネスモデルが構築されている。NFTゲームの場合は、アセットが市場に出て次のユーザーに渡る。ビジネスとして見ると収益の機会が失われることになる。しかし、うまく使えば、取引の手数料などで収益を上げることができる。さらに、株式のように価値を高めていって市場評価が高まり、参入者が増えて最終的に利益として還元されるという可能性もあるが、実際そこまではまだ難しいだろう。

 

今後の可能性として、ゲーム内の一部の希少で高付加価値のあるアセットのみをNFT化して流通させることがありえるだろう。たとえば、100あるアセットの5くらいをNFT化するなどだ。従来のソーシャルゲームでも、一部をNFT化するというのは実装難易度もそれほど高くない。これまで培ったソーシャルゲームのノウハウを活かしつつ、いろいろなキャラクターの値段を見ながら楽しんだり、アセットをトレードしたり、自分のアセットを別のゲームで使ったり、そういうゲームが登場するのではないか」(徳地氏)

 

 

文・写真:仲里淳