NFTの可能性を探る ― 運営者、プレイヤー、投資家の視点から語るブロックチェーンゲームの現在と未来

ブロックチェーンゲームの運営元、プレイヤー、投資家、二次流通マーケットプレイス提供者が思い描くNFTの未来とはどのようなものか。9月5日、東京都内にあるブロックチェーン特化型コワーキングスペースのNeutrinoで開催されたイベント「ブロックチェーンデータで紐解く2019年上半期のNFTマーケット」の後半に行われたパネルディスカッションでは、ゲームを中心に現状と課題、そして将来の展望が語られた(イベント前半のレポート記事はこちら)。

NFTゲームの運営者、プレイヤー、投資家が集合

NFT(Non-Fungible Token:代替不可能トークン)をテーマにしたイベント「ブロックチェーンデータで紐解く2019年上半期のNFTマーケット」の後半ではパネルディスカッションが行われ、ブロックチェーンゲームに携わる5名が登壇。自ら司会も努めたメタップスアルファの青木宏文氏が「運営者やプレイヤーなど、さまざまな立場でNFTにかかわる方々に集まっていただいた」と紹介したように多彩な顔ぶれとなった。以下、登壇者のバックグラウンドを簡単に紹介する。

 

小澤 孝太氏(クリプトゲームス株式会社)
大学卒業後にサイバーエージェントに入社して、ゲーム関連事業の立ち上げを数多く経験。2018年にブロックチェーンゲームを自ら手がけるべくクリプトゲームスを起業し、2019年6月に「CryptoSpells(クリプトスペルズ)」を正式リリース。現在、「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」とともにもっとも勢いのあるNFTゲームの1つになっている。

 

橋詰 大造氏(株式会社アリヲリ)
DeNA、マイネット、Cygamesとネット企業を渡り歩き、2018年にスマホゲームの開発などを行うアリヲリを起業。現在は2018年に立ち上げたブロックチェーンゲームの攻略サイト「ピプリクト」の運営に注力するほか、My Crypto Heroes内のランドオーナーになるなどプレイヤーとしても精力的に活動している。

 

岡部 典孝氏(リアルワールドゲームス株式会社)
大学在学中から起業家として経営者やCTO、CFOなどを経験し、2017年にリアルワールドゲームスを共同創業。バーチャルとリアルの融合を探求しながら、スマホアプリを使って歩くことで獲得できるERC20トークン「ARUKUCOIN(アルクコイン)」で世の中の運動不足解消をめざす。イングレスやポケモンGOのプレイヤーとしてもハイレベルなほか、非中央集権政治団体「トークントークン」の設立や暗号資産取扱古物商の開業など幅広く活動している。

(左から)小澤孝太氏(クリプトゲームス株式会社)、橋詰大造氏(株式会社アリヲリ)、岡部典孝氏(リアルワールドゲームス株式会社)
(左から)小澤孝太氏(クリプトゲームス株式会社)、橋詰大造氏(株式会社アリヲリ)、岡部典孝氏(リアルワールドゲームス株式会社)

ともい氏
2017年末から仮想通貨取引を始め、自動売買システムの開発・運用とブロックチェーンゲームに没頭。2018年前に脱サラ&起業して仮想通貨で生計を立てる挑戦を始め、「仮想通貨だけで食っていく男のブログ」やnoteで運用や取引について発信している。現在ゲームはCryptoSpellsに注力しており、課金額は100万円を超える。

 

青木 宏文氏(株式会社メタップスアルファ)
NECでクラウドシステムの立ち上げや研究技術のPoCなどに携わり、退職後にUXデザイン・コンサルティングファームを設立。その後、暗号通貨やブロックチェーンの関連技術や社会動向のリサーチ期間を経てメタップスに参画し、ブロックチェーン事業責任者としてメタップスアルファではNFTマーケットプレイス「miime(ミーム)」の開発・運営を指揮する。

(左から)ともい氏、青木宏文氏(株式会社メタップスアルファ)
(左から)ともい氏、青木宏文氏(株式会社メタップスアルファ)

普及に必要なのは「やさしいUX」それとも「おもしろさ」?

最初のトピックは「NFTの認知が広がり普及するためには何が必要か」というもの。現状、NFTの代表的な活用事例がゲームなので、これはそのまま「ブロックチェーンゲームが普及するには?」といい替えることもできるだろう。これに対する見解として、まず橋詰氏から使い勝手の悪さが障害になっているという意見が出た。

 

「口座開設の手間はもちろん、MetaMask(メタマスク)が必須で、秘密鍵の管理もしつつ、そこからさらにイーサを購入しなければならないなど、遊ぶまでのステップが多過ぎる。興味をもつ人が100万人いても各ステップで脱落して1/10になってしまい、結局残ったのは1000人だけ。それが現状ではないか」(橋詰氏)

 

ともい氏も同様の意見で、現在のソーシャルゲームのモデルと比べて課金がハードルになっており、円で課金できるようになるのが理想とする。

 

これに対して、コンテンツの力不足を指摘したのが小澤氏。UXに課題はあるとしつつも「インフラはいずれ整備されていく。やはり本当におもしろいと思えるゲームやコンテンツが必要で、そのためにはブロックチェーンならではのアイデアを考えなければならない」と述べた。そして、自身が手がけるCryptoSpellsで、My Crypto Heroesとキャラクターやアイテムを相互交換可能にしたことを「ブロックチェーンならでは」の具体例として挙げた。

 

「自分が所有するキャラクターで異なるゲームを遊ぶことができる。モンハンの剣がドラクエの世界で使えるといった世界観を創り出すことも1つのアイデアだし、My Crypto Heroesのランド(土地)のようなSTO的アプローチもそう」(小澤氏)

 

青木氏は、ブロックチェーンゲームについて「まだ入ってきてほしいユーザーが入れていない」という。これは、ゲームやコンテンツそのものを評価してというよりは、仮想通貨やブロックチェーンへの注目や興味が動機になっているプレイヤーが大半だという意味だ。そのようなアーリーアダプターや業界人ではなく、純粋にゲームを楽しむ一般層まで広がったときにどうなるのか。

 

「そうなったときに初めて見えてくるものがある。気にすべきポイントや注力すべきことも現在とは異なるだろう。だからマーケットプレイスのmiimeでも、そういった一般ユーザーの障害になるものを取り除いていこうと取り組んでいる」(青木氏)

VR、AR、知財などNFTの応用は幅広く仮想&現実の融合にも欠かせない

続くトピックは「NFTが現実社会でどのように融合されていくか」で、長年バーチャルとリアルの融合を考えてきた岡部氏に話が振られた。岡部氏は、現実世界にNFTによって裏付けられたオブジェクトが置かれて融合することでNFTの価値も上がるとし、有望な事例として「Minecraft Earth(マインクラフト アース)」を挙げた。さらに、リアルの土地で遊べる権利など、実際にその場所にいると有利になるしくみ――たとえば、ある場所に行くと鍵のアイテムが手に入るなど――は有効でゲームにも応用できるのではないかという。

 

橋詰氏は、CryptoKitties運営元のDapper Labs社がNBAと開発中のゲーム「NBA Top Shot」に注目。仕様や詳細まだ不明だが、NBAのプレイ動画や音声をNFTで所有できるようになるらしいという噂に対して、「限定で10人だけプレーの瞬間を動画などで所有できるようになるかもしれない。音楽やコンサートなどにも応用できそうで、だれもが気軽にNFTを所有・交換できる世界が近いうちに来るのではないか」と期待を示す。

 

小澤氏は、IP(知財)コンテンツでの応用が早々に始まるだろうとし、Anique社が手がける「進撃の巨人」のデジタルアートなどを例に挙げた。そして、NFTをもっていることで現物を印刷できたり、サロン参加権のようなものを提供したり、NFT以上の付加価値を生み出せるものが出てくると予想。実際、IPコンテンツについては本イベント後の9月16日に、My Crypto Heroesの運営元であるdouble jump.tokyoが手塚プロダクションとのコラボレーションを発表するなど、各所で取り組みが進みつつある。

 

青木氏は、NFTによって生み出される所有感や現実感が、バーチャルとリアルの融合に欠かせないという。

 

「NFTならアイテムなどの所有物に数量制限がかけられる。いくらでもコピーできると現実味や所有感が薄れてしまうが、数量制限が可能になればアイテムが実体として存在するという現実感を生み出せる」(青木氏)

 

この所有感が、今後はVRやARなどのバーチャル世界が充実していくなかで重要になる。My Crypto Heroesのランドでは、所有者がその土地を盛り上げるためにさまざまな活動(運営)を行う。青木氏はこれが現実世界の土地運用に似ているのではないかという。

 

これに対して岡部氏は、土地や物件の運営自体は「SimCity(シムシティ)」など従来のゲームでもあったとし、現実か仮想かを問わずNFTを運営・運用することで稼げるようになると、証券とみなされて法的規制の対象になってしまう懸念があるとした。

プレイヤーの努力と工夫で価値を高められるのがNFTらしさ

ゲーム開発・運営元、プレイヤー、投資家として、NFTの価値を高めるために何ができるのか。また、NFTゲームをプレイするにあたって投資と娯楽どちらを重視しているのか。この問いに対してさまざまな意見が出た。

 

橋詰氏は、My Crypto Heroesにおいて、世界で19体しか存在しないアインシュタインというキャラクターを所有している。購入額は当時で14イーサ(ETH、当時の円換算で約14万円)。ゲームの1つのキャラクターと考えると高いと感じるが、投資という視点があったのだろうか。その答えは意外にも「ゲームで勝ちたかったから」というもの。

 

「14イーサは自分でもけっこう高いとは思った。なぜ買ったかといえば、同時期にデュエル(バトル)イベントが開催されていて、アインシュタインをもつ相手と対戦して圧倒的な強さで打ち負かされてしまった。それが悔しくて、手に入れれば自分も強くなれるとかなり検討した末に思い切って購入した。投資という観点はなく、最後の1体になるかもしれないということで背中を押された。現在は大きな含み益になり、結果的に投資としても大成功したが、My Crypto Heroesで大きな資産を築いているプレイヤーは、投資よりも負けず嫌いのほうが強いのではないか」(橋詰氏)

 

当時は、まだ二次流通市場が活発ではなく、売買を意識していなかったという橋詰氏だが、逆にいまなら市場での取引を念頭に置けるので高額でも買いやすくなるのではないかと見る。

 

運営側として小澤氏がの取り組むのは、純粋にゲームとしてヒットさせることだという。トークンの発行枚数が限られているので、ユーザー数が増えて需要とともにNFTの価値も高まるというのが理想だとする。また、有名なIPや著名人とのコラボレーションも計画しているという。

 

「いずれにしても本丸はゲームで、よりおもしろいゲームを作ってヒットさせることが軸になる」(小澤氏)

 

一方、プレイヤーとしてNFTの価値向上に貢献できることを語ってくれたのがともい氏だ。NFTはゲーム内のキャラクターやアイテムなので、ゲーム内での存在価値や有用性――たとえばバトルで強さを発揮できる使い方など――が見つかるとNFTとしての価値も上がる。自分が所有しているキャラクターなら、その価値を上げるために効果的な使い方を考えるというわけだ。もっとも、それ以前にゲーム内での大会のルールで価値が大きく上下するところもあり、それがおもしろさであり批判のもとにもなるのが従来のソーシャルゲームに比べて多いと感じるとのこと。

 

さらにともい氏は、今後はゲームプレイに長けた人と投資専門の人がタッグを組んで価値を上げるようなことが出てくるのではないかと予想する。似たような構図は、実際のトレーディングカードゲームでも見られるもので、自分が多く所有しているカードを大会で使って勝つことで、その価格を上げて売却するのだという。

 

橋詰氏も、プレイヤーとして使い方を考えることで価値を上げられるのはNFTならではの特徴だとする。

 

「My Crypto Heroesだと最強編成というものが各大会のレギュレーションごとにある。プレイヤーはその最強編成を倒せる新しい編成を生み出そうとするが、その際に必要なキャラクターやアイテムを発掘できれば価値が上がる。最近では徳川慶喜がそれで、当初は注目されていなかったが、特定のアイテムとあわせると強くなることが発見されて大きく値を上げた。自分の目利き力や工夫次第で価値を上げられるところがNFTゲームのおもしろさだと感じている」(橋詰氏)

 

2人の意見にゲーム運営側の小澤氏も同意する。いわく、ゲーム内のメタ※1をどう動かすかはかなり考えており、レギュレーションの異なる大会を開催したり、新カードとの連携で旧カードの価値が上がるようにしたり、さまざまな手を打っているという。

※1:「メタ」とはトレーディングカードゲームの用語で、ゲーム内のトレンド(勝率の高い組み合わせ=メタデッキ)やそれを読んで対策したりすること=メタゲームなどを指す

「価値が下がるとどうしてもクレームが来てしまう。死蔵するカードがなるべく出ないように、どんどんメタを回すような設計にしている」(小澤氏)

NFTゲーム市場は「青い」が出口戦略は不透明

プロジェクトの多くがPoCの域を出ないブロックチェーン業界にあって、早期の収益化が期待できそうだとされる数少ない分野がゲームだ。しかし、実際のところは決して楽観視できないというのが本音のようだ。

 

NFTを使ったゲームやビジネスのメリットとデメリットについて問われた小澤氏は、「まだユースケースを作っている段階ではっきり見えていない」としつつ、スタートアップにとっては参入しやすい点はメリットだと語る。

 

「既存のソーシャルゲーム市場がレッドオーシャンであるのに対してNFTゲームの市場はまだブルーオーシャン。若者がチャレンジしやすい環境というのはよいことだし、自分にとってはありがたかった」(小澤氏)

 

ただし、これは大手にとって参入するメリットや具体的なイグジット(出口戦略)のイメージがはっきり見えていないということの裏返しでもある。小澤氏も「リスクが大きく、リターンがない」と厳しい現状を認めつつ、「miimeのような周辺サービスが増えれば経済圏を広げられる。それはNFTの取引市場かもしれないし、アナログのカードゲームかもしれないが、そうやって広げることで手数料収益が得られる可能性もある」とする。

 

岡部氏も、イグジットをどう描くかは難しい問題であり、成功事例にも心当たりがないという。そのうえで、めざすべき1つの方向として、独自トークンによる価値向上を挙げる。

 

「NFTと交換しやすいトークンは、NFTの価値と連動してトークン自体の価値も上がる。たとえばイーサでも買えるが、あるトークンのほうがよりお得に買えるようになっていたら、ゲームの人気上昇とともにファンが増えてNFTの価値も上がり、さらにそのトークンの価値も上がるという好循環ができる。そうなれば、トークンのIEO(Initial Exchange Offering)というイグジットも見えてくる。最終的にめざすのはIPOかもしれないが、途中段階のイグジットとしてはありえるのではないか」(岡部氏)

金融庁のパブコメ回答は業界の追い風に

本イベントが開催された2日前の9月3日、金融庁から「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果が公表された※2。そのなかで注目を集めたのが、「ERC721規格でゲーム内の固有トークンを発行することに対する法的規制はあるか」という質問に対して「法令に基づき、実態に即して個別具体的に判断されるべきもの」と金融庁が回答したこと。これは、NFTは必ずしも仮想通貨に該当するわけではないという意味で、9月5日にmiimeをリリースしたメタップスアルファの青木氏も、業界の追い風になったと語る。

※2:参考記事「NFTは必ずしも仮想通貨に該当せず」金融庁が事務ガイドラインのパブコメ結果を公表(Blockchain Insight)

「この回答によって、ビジネスに参入しやすくなるというのはある。直後にmiimeの発表をしているものの、それまで当局に問題はないかとずっと確認してきた。その手間や労力はものすごくかかったが、コメントが出たことでそういった心配や懸念が払拭された」(青木氏)

 

ただし、これは既定路線であり、今後より難しい問題が出てくるのではないかと懸念を示したのが岡部氏だ。

 

「追い風にはなるが、業界内の人間にとってはわかっていた結論でもある。それよりも、『NFTだけどセキュリティ(証券性がある)』という領域のほうが、今後は規制が厳しくなるのではないか。NFTと通常トークンの切り分けを明確にするという仕事が残っているが、その次はNFTとセキュリティが両立したときにどうするのかという問題がある。もちろん金商法に抵触するので、第一種金融商品取引業でなければならない。しかし、そうなるともはやゲーム会社ではないのではないかということで、その乖離をどう整理していくか考えなければならない」(岡部氏)

 

CryptoKittiesが最初のきっかけを作ったNFT/ブロックチェーンゲーム市場は、まだ始まったばかりでその成長性も未知数だ。とはいえ、参入者やリリース予定のタイトルも多く、ブロックチェーンの社会実装を牽引する分野であることも確かだ。今回のイベントで語られた課題を解消しながら、どれだけ可能性を広げていけるかが注目される。

 

文・写真:仲里淳